20歳くらいの頃旺文社文庫で読んで、今は既にない斑鳩の里に思いを馳せて陶然となっていた。それが、しばらくして結婚やら引っ越しやらで荷物になる本を整理した時に本作も売ってしまったのだが、今になってまた読み返したくて仕方なくなった。それで春秋社版函付のものを古書店で500円程度で買い求めたが、読み進むにつけ、どうもしっくり来ない。やはりあの豊富な写真とページの隅で見つけられる脚注の旺文社文庫でないと私の場合はダメなのだと悟った。春秋社版にも巻頭にたくさん写真はあるのだが、読み進めているその箇所にその場所の写真があるのがやはりベストなのだ。そこでネットで探るとすぐに見つかった。アマゾンで送料込みでも300円位。安杉。早速買い求めた訳である。
左:春秋社版右:旺文社文庫
春秋社版のページ内容
春秋社版とほぼ同じ内容のページの旺文社文庫。写真がありがたい。
私は読書を始めるのが遅かった。本格的に読み始めたのは中学1年の時だった。その読むきっかけになったのは光文社「少年探偵 江戸川乱歩全集」。ジュニア版ならではのリアルな挿絵が雰囲気を盛り上げてくれた。「挿絵のある所まで読もう。次の挿絵まで読み続けよう。」という思いで全巻を読破。
中学の図書館に入り浸っていたのも懐かしい。
それからポプラ社の「名探偵ホームズ全集」、「怪盗ルパン全集」と相次いで読了。いよいよ日本文学白樺派へと進む読書力を養ってくれた思い出のシリーズなのである。その後はもちろん必ずしも挿絵のある本を読んでいたわけではない。いやむしろ挿絵がない本の方が圧倒的に多い。しかしながら、挿絵や写真がふんだんに使ってある本の楽しさは自分の脳の中に染み着いているらしく、今も時々その嗜好が出てしまい、絵本や写真集でそれに応ずるという感じなのだろう。
しかし今回の「大和古寺風物誌」については、上記の思考プラス美しい思い出と郷愁。そしてかつてあった自分の中の青春というフレーヴァーが加味され、猛烈にそれを求めたということなのだと思う。そして今、亀井さんの名文と郷愁溢れる白黒写真を堪能しつつ噛み締めるようにゆっくり読み進めている自分なのである。
まあ、新年早々つまらんことを畏まって書いたものよと自分ながら思うのだが、ま、みなさんお許しくださひ。