夢の中の小樽にて (誕生日の早朝に見た夢)

 

 我々一行は小樽を訪問した。(とは言っても自分以外誰かは分からない。勝手に友人と思って居るが、全然知らない人たちかも知れない。何人なのか正確な人数さえわからない。)大正から昭和初期に建設されたような古い家にお邪魔する。旅館ではないが、昔何かの商売を手広くされていたような家の作りで、玄関口が広く、部屋も沢山あるので一人一人に一部屋づつ休憩部屋があてがわれた。自分が通されたのは中庭に面した薄暗い12畳くらいの部屋で、古い調度品が沢山置かれていて、その中心に古いソファーがあり、自分はその横に荷物を置いてから腰を下ろした。脇のテーブルには着物が折りたたんで置いてあり、これに着替えろということなのだろうと考え、着替える。手持ち無沙汰に室内にあるものをいろいろ触っていると、その部屋の人と思えるおばさんが入って来る。何故かやばいと思って端に寄って静かにしていると、おばさんはテーブルにお茶をぽん という感じで置いてすぐに出て行ってしまった。邪魔じゃなかったのだとほっとして何気なく窓から外を見る。空は晴れて居て、草が伸び放題の中庭がよく見え、向かいの家の縁台に若い芸妓3人がわいわい言いながら涼んでいる。庭にそよ風が吹いているようで、後れ毛のあたりがそよいでいる。ああ、小樽にはまだこんな若い芸妓さんがいるんだなぁ。いいなぁ。と、もっと硝子戸に近寄って様子を暫く見て居ると、3人に気付かれてしまい、思わず後退る。声が聞こえる。

「あれ、あそこに女の子がいる。」

「え、どこどこ?」

「ほら、向かいの〇〇さんとこ」

「どれどれ」

という感じで、3人の視線がこちらに集まる。少し焦って視線を移した先に姿見があり、そこに写る自分の姿に驚く。なんと自分は娘のような髪を結い、振袖を着て居るのだ。何故この姿になって居るのか全くわからず、戸惑う。自分が20歳の男であると分かっているので、彼女たちに見つかったら大変と慌てる。3人はつっかけを履き、草をかき分けながら中庭の真ん中当たりまで近づいて来ている。驚き躓いて倒れ込み、その拍子になみなみと水をたたえたピッチャーを倒し、顔にまともに水を被った。洪水のように水が顔に注ぎ一時息ができなくなる。溺れるのじゃないかと思うほどだが、次の瞬間、水は急速に引いて行った。水が流れたあたりを見ると、床にはなぜか排水溝がある。どうやらここに水が流れて行ったらしい。ああ、よかったと立ちあがり窓の外を見ると、もう彼女たちの姿はどこにもなく、草がそよそよ揺れているだけで、見て居て寂しい気持ちになる。

 その時「時間です」と家の人が呼びに来る。玄関に向かうと仲間は皆揃って居て、これからどうやら小樽市内に繰り出すらしい。どこへ行くんだろう。楽しみだなぁ。と思っている。


 ~そこで目覚め~

 目覚めたのが少し早い時間だったので、夢の続きを見たい。3人の芸妓にもう一度会いたいと願いながらもう一度寝入ろうとし、90分ほど頑張ったが、夢を見ることはもうなかった。