1978年。腕に覚えのある者は、フュージョンやクロスオーヴァーへと向かいつつあった時期で、いわゆるプログレッシヴ・ロックは衰退の一途を辿っていた。王たるクリムゾの姿は既になく、ピンク・フロイドも「アニマルズ」
で大作主義を捨て、コンパクトなロケンロールを演じて見せ、賛否両論を巻き起こし、初期からのファンだった人々の多くはその席を離れた。
そんな激動の時期に、マイクはLP2枚組で全1曲というプログレ超大作を発表した。


そしてマディ・プライヤーの妖精のような歌声は地球を飛び越えて宇宙までもを感じさせてくれる。
これほどまでのライヴ・パフォーマンスはそうそう味わえないだろう。そして、このライヴが映像で残されているというのだから、堪らないのだ。もちろんマイクのことだからオーバーなアクションはなく、演出的にも大人しいものだが、これだけの大編成のバンドがパフォーマンスを繰り広げている姿を見られることは、自分にとっては鳥肌ものである。そして、映像ならではの事にも気づかさせられる。それは大人数の中でも孤立するマイクの姿だ。それは時に他メンバーを突き放しているようにも見えるし、他メンバーに敬遠されているようにも見える。これは、後にレコーディングメンバーなどから明かされた事だが、マイクの完璧主義と、それによると思われるわがままとも取られる行動によってメンバーから白い目で見られたこともあるらしい。マイクはどうも人付き合いが苦手のようで、誤解を生む人柄のようなのだ。と、そんな事まで見えてきてしまうのだから映像記録というものはオソロシイ。とまれ、それくらいリアルで素晴らしいライヴ映像なのだ、と言いたいのである。
内容構成はDVD1枚目に「呪文」全曲。DVD2枚目は「チューブラーベルズ」全曲が、「呪文」リリースとほぼ同時期に発表された「ギルティ」を挟んで演奏されている。そして最後はアンコールで締めくくり。なんか暫くぼ~っと余韻に浸れる作品なのであります。