
鉛筆書きと思える白黒の作品で、リトグラフか複製画で、
マンドリン、チェロ、コントラバスが天井の高い部屋に置かれているもので、
人の姿も見えるがその姿は透けているのか、薄い線でしか描かれていないものだった。
未完成作とも考えられたが、自分は、これは楽器が持っている人の記憶を描いたものではないか、と思った。
つまり、楽器たちが人と接したことを思い出したり、夢に見たりしている絵なのだな、と
感じたわけだ。
後日、この絵の完成形と思われる作品が迎賓館・赤坂離宮に飾られているということを知った。
作家は小磯良平。
大ホールに「絵画」と「音楽」の対となっている作品とのこと。
小磯作品らしく重厚で緻密、そして上品な作品だ。未来への希望にも満ちている。
しかし、自分は落胆した。
病院の作品からはイメージが湧き上がってきて面白く感じたが、迎賓館・赤坂離宮の"作品"は余りに完成され過ぎていて、自分のイメージなど入り込む余地すらない。
それで、がっかりしてしまったのだ。
