$旧聞逍遙 昨夜、歩きながらKing Crimsonの『USA』(ライヴ・アルバム)を聞いていて思ったこと。
 
 このアルバムはエディ・ジョブソンによるヴァイオリン(及びピアノ)がダビングされている。ロバート・フリップによると、オリジナルのデヴィッド・クロスによる音源は適正な録音レベルで録音されていなかったため、オーヴァーダブし直したと語っていた筈だが、自分はこの説には非常に猜疑的だった。というのは、過去より、フリップは自分の気に入らない人物やパフォーマンスについては、強引にメンバーの入れ替えをしたり、わざわざサウンド加工をしたり、あるいは完全無視をきめこむなどの大人気ない行為をしてきたからである。
(Ex.グレッグ・レイクの声は好きだが、ベースプレイは嫌い。だからやる気のあったグレッグ・レイクからベースをピーター・ジャイルズに交代し声のみを残した。これでプライドを傷つけられたレイクはELP結成へと動いた(らしい)。ポセイドンのめざめ -In The Wake Of Poseidon- 収録の「ケイデンスとカスケイド Cadence And Cascade」のヴォーカルをとったのは、ゴードン・ハスケルだが、フリップは彼と彼の声が嫌いだったらしく、後年ヴォーカルをエイドリアン・ブリューにわざわざ差し替えて録音し直したほか、最初のベストアルバム『新世代への啓示 - A YOUNG PERSON'S GUIDE TO KING CRIMSON-』では、そのハスケルが正式メンバーだったアルバム『リザード - Lizard - 』の収録曲をすべて無視していること。など。)
$旧聞逍遙-新世代への啓示  であるからして、「太陽と戦慄」クリムゾンのデヴィッド・クロスが当時のライヴ・ツアーにおいてお荷物的扱いを受けていた(ライヴ・ボックス「グレイト・ディシーヴァー - ライヴ1973~1974』』にクロス自身がこのことについて当時の苦悩を語っている。)ことより、フリップの不興を買ったためなかば強引に差し替えられたのだと思っていた。
 そして、この考えは今もあまり変わらない。
 
 しかし、昨夜「太陽と戦慄パート2」が後半にさしかかり、ヴァイオリン・ソロが始まったときに、自分は幽玄の世界に引きずり込まれるような、昼間の空間から寒夜の草原へ突き落とされたような気分になって身震いしてしまった。つまりは、まさに“戦慄”してしまったわけだが、このヴァイオリンが、オーヴァーダブされたエディ・ジョブソンによるプレイである。
 つまりは、この“戦慄”すべき音色が、ジョブソンの方がクロスより表現し得ていたのかもしれない。
 と、ちょっと、思えてしまったのだ。
 
 実は、この曲のオーヴァーダブ前の音源は、さるロック・カフェで一度聞いたことがあるが、その時の感興はどうであったか、まるで覚えていないのである。

 まあ、アナログ時代から聞き続けてきている。同じ曲を36年間にわたり、何十回も聴いてきたにもかかわらず、昨夜のような“戦慄”は初めてであったから、自分の感性はどうなのか?という疑問もあるにはあるが、まあ、それはそれで、とどのつまりは、フリップもただ私怨のみで録音し直していたわけではないのかも知れない、と、ちょっと思ってしまった、というお話デシタ。

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