
机に向かいながらも、実は勉強もせずただぼうっと、トランジスタ・ラジオを聴いていた時に流れてきた音楽に耳が引き付けられた。
それが、前々回超?訳に挑戦した『Yours Is No Disgrace』だった。
衝撃というより、「なんだ、コレは?」といった驚きであったのかも知れない。
兎に角今迄一度たりとも聴いたことのないサウンドだった。
当時に持った印象は「サイケデリック!」
ポピュラー音楽をまともに聴いていないながらも感じたイメージである。知らぬこととはいえ、テレビでいくつものサイケデリックなバンドやイベントは紹介されていたので、それらの印象からこんな風に感じたのだろう。とにかく、確証があったわけではない。まだまだロックに造詣がなかった頃のことである。
何せ、以前にも書いたことだが、この頃までの自分は軍歌と唱歌と童謡そして戦前戦後における一部歌謡曲であった。水木しげるではないが、ウオーターラインシリーズで連合艦隊を再編しようと考えていた頃なのだから仕方がない。
( しかしもちろん、これは頓挫した。規模を縮小して、せめてハワイ奇襲時の連合艦隊を再編しようとも目論んだが、金銭的目途が立たず断念。大東亜戦争時の全戦艦と、空母の赤城、加賀、飛龍、蒼龍、瑞鶴、翔鶴、大鳳、信濃、それになぜか敵空母エンタープライズ。そして重巡、軽巡、駆逐艦の一部を組み立てたに留まってしまった。後には置き場にも困り、結局、家のリフォーム時に廃棄の憂き目に逢う。)
当時の私は、歌謡曲を含むポピュラー・ミュージックは軽佻浮薄で心の奥に響くものを含まないものと思っていて、その上洋楽は英語がわからないのに、心に訴えてくるものが通じる訳がないと決めて掛かっていた。
姉はGSを経て日本のフォークを聞き、いわゆる当時の若者の王道を歩んでいたが、彼女の部屋から漏れ聞く音楽を何度聴いても自分の馴染めるものではなかった。
そんな自分であったから、あの夜に聴いたYES SOUNDは、かなり異質なものだった。それも、当時私が持っていた唯一のロックのシングル盤:Pink Floydの「吹けよ風 呼べよ嵐」がインストルメンタルだったのに対し、『Yours Is No Disgrace』はヴォーカル曲。歌詞のわからぬ英語曲が妙に耳に残ったのはナゼなのか??
と思いながら、プラモ製作と軍歌・唱歌の日常に忘却していこうとしていた・・・・訳である。

今思うと、ロックには軽佻浮薄以上の“何か”があると教えてくれたのは、この2作であったと言える。ピンク・フロイドは映像的で、サウンドを聴いているだけで映画を鑑賞しているような感覚に襲われて病みつきとなった。そして、『聖なる館』は、ハードなサウンドの奥に広がる幽玄な世界が、当時嫌いであった筈のシャウト系ヴォーカルすらも覆いこみ、それを力にして更に訴え掛けてくる感情のようなものに打たれたのだと思う。この時レッド・ツェッペリンの『聖なる館』を聴いたことがとても重要であったと云うことができよう。いうなれば、レッド・ツェッペリンは自分とプログレの橋渡しをしてくれたバンドである、と言っても過言ではないのだ。
それにしても、プログレ全盛の年だった。E,L&PもKing CrimsonもPFMもAreaもOsannaもGentle GiantもGenesisもFocusもCaravanもCamelもIl Balletto Di BronzoもそしてCanも力作・名作を発表していた神がかりといってもよいプログレ最強の年であったのだ。そんなパワー全開の時期であったからこそ、自分は知らず知らずのうちにプログレの大波に飲まれていたという訳である。だからこそ、このパワーに押されて軍歌・唱歌から徐々にプログレ至上主義へと大変換を遂げ得たのである。
とはいうものの、実は高校3年迄は過渡的混沌といえる時代であった。自分の部屋では連合艦隊旗艦戦艦長門のポスターの横ではジミー・ペイジとロバート・プラントが悶絶の表情を浮かべ、その更に上にはデイヴ・ギルモアが巨大な月を映写したスクリーンを背にギターを爪弾いており、窓辺の額縁には重巡高雄と妙高の荒波を切って進む勇姿を写し取った絵葉書、戦前の唱歌にちなんだ挿絵の切り抜きなどが飾られているという有様であった。
さらに音楽はといえば、まさに壮絶で、「パットン大戦車軍団 」のテーマと、東海林太郎と、童謡と、山田 耕筰 と、ピンク・フロイドと、岡晴夫 と、椰子の実と、キング・クリムゾンと、花の街と、そして軍歌が渦を巻いていたのである。今思っても、この頃の自分がどういう人間性を有していたか、全く理解することが出来ない。これぞConfusion will be my epitaph.であらう。
[長くなってしまったし、朝にもなってしまった。少しは眠らなければならないので、二部構成とします。乞うご期待。??]
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