
RCサクセションの熱烈なファンというわけではなかった。
おそらく初期のフォーク調の頃のを聞いて、自分の好きなタイプではないと思っていたのかも知れない。
学生時代の夏。サークル仲間に連れて行かれた野外ロックコンサートで、RCが“ロック・バンド”に変貌していたのを初めて知った。
はっきり言ってこれはかなり遅い反応だ。日本のロックをあまり聴いていなかった時期だったのだが、今思うと少し迂闊だったと思う。
その時はサザン・オールスターズがRCの前座で、忌野清志郎が「なかなかイカシタ奴らじゃねぇか。これからも一緒にやっていこうぜ。」みたいなことを言っていた。もうRC全盛時代に突入していたのだ。
『雨上がりの夜空に』みたいなちょっとセクスィな歌を、隣のフツーの可愛らしい女子高生が大声で叫ぶように歌っているのを見て「あの、ネガティヴな感じで歌っていた奴が、今はスゴイことになってるんだなぁ。」と実感した瞬間であった。
さて、時代は少し飛んで、1989年10月、『夜のヒットスタジオ』での『FM東京事件』のこと。忌野清志郎がもっともトンガッテいた頃の話である。
といっても今は語り草になっており、知っている人も多いかも知れない。
忌野清志郎(ZERRY名義)はタイマーズのギター&ヴォーカルとして登場。
4曲メドレー『タイマーズのテーマ~FM東京(当初予定の偽善者と差し替え)~デイドリームビリーバー~イモ』約10分を歌い切った。
その内容、特に2曲目の『偽善者(FM東京)』が凄かった。
歌詞をここに掲載しよう。
FM東京 腐ったラジオ
FM東京 最低のラジオ
なんでもかんでも放送禁止さ
FM東京 きたねえラジオ
FM東京 政治家の手先
なんでもかんでも放送禁止さ
FM東京 バカのラジオ
FM東京 コソコソすんじゃねえ
おま○こ野郎 FM東京
FM東京 腐ったやつだ
FM東京 気持ち悪いラジオ
なんでもかんでも放送禁止さ
FM東京 きたねえラジオ
FM東京 政治家の手先
おまん○野郎 FM東京
バカ野郎なにが27局ネットだ
おら~ FM仙台
おら~お○んこ野郎 FM東京
ざまあみやがれ
はっきり言ってものすごい。今なら『タイマーズのテーマ』の時点でカメラと音声を切り替えでお詫びをしている所だろう。
この頃「昨日のテレビ見た?」と言うような年では既になかったが、この時だけは
「昨夜見た?、キヨシロー」
「見た見た。スゲエ、やっちゃったね、キヨシロー。」
と、音楽仲間では話題騒然となった。
忌野が何故ここまでしたかというと、、RCサクセションのアルバム『COVERS』の発売中止や曲の削除指示。反原発曲『サマータイム・ブルース』などの放送自粛や、忌野が山口 冨士夫 の“TEARDROPS”に作詞提供&コーラス参加した『谷間のうた』やタイマーズの『土木作業員ブルース』がFM仙台とFM東京で放送禁止になっことなどへの怒りだったのだろう。この頃清志郎を取り巻く言葉狩りや曲狩りは重層複合的に積み重なっていたので、忌野は相当ストレスを溜め込んでいたことだろう。この積もりに積もったストレスの発散を兼ね、自由に表現したい忌野が、放送禁止などの自主規制をしてうちゃってしまう“敵”である放送局に宣戦布告したものだと自分は思っている。
忌野清志郎はここまでして戦ったが、残念ながら検閲・自主規制の現在の状況はこの当時の比ではなくなってしまっている。当人が何も思っていないのに、他人を慮って勝手に規制してしまうことも間々ある放送局。この事なかれ主義はネットに押されて今は存亡の危機に瀕している。
さて、問題の映像。ありがたいことにYoutubeにUPされていて、見ることが出来る。画質も音質もよい。削除されてしまう前に見ておいた方がイイ。
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