冬の間バス通勤をしていて、気になる建物をふたつ見つけていた。雪が融けて自転車で動けるようになったら、ここへ来て写真を撮ろう。と思っていた。ここにあるのはレンガの壁に描かれた『双頭の鷲』である。二つの権威を一つの身体に有していることの象徴として、古くは神聖ローマ帝国・ロシア帝国ロマノフ王朝などの紋章に描かれ、現在もアルバニアの国旗に使われている。 ただ、ここで"権威”の象徴というには少し弱々しい。翼はぼろぼろになった旗のように見えてしまうからだ。
そもそも、ふたつの"権威"とはここでは何なのか?
そして、気になるのは「1930」「'61」と書き入れられた数字である。「'61」は1961年ということ。おそらくこの建物が建てられた年なのだろう。それでは「1930」は何か。1930年と考えるのが普通だろうが、それではなぜ、「'30」としなかったのだろうか。バランス的には良いとはいえない・・・・・・ とどうにもならぬことをぐだぐだと考えてしまう。しかし、いくら考えても正解は出てこない。
いっそ裏の所有者宅にお邪魔して、謎解きをしてもらおう。こう思って扉横の呼び鈴を鳴らそうと人差し指を伸ばしたが・・・・
止した。不審者と思われ、通報されるがオチである。
そこで、自分で勝手にオチを付けることにした。「1930」年生まれのご主人が「'61」年に家を建てた記念に作らせた『双頭の鷲』。ふたつの"権威”は地元商工会の会頭であり、町内会会長という二つの役職を表したものだと。(ちょっとセコイ考えですが)
作らせた人が「1930」年生まれと考えると、これを作らせた人は現在80歳。ご存命なら、この邪推を直接笑い飛ばしながら真実を教えてほしいものだ。
『双頭の鷲』から2丁ほど北上すると「グランド居酒屋○士」あとがある。今も外にチェーン店は残っているが、ここは店を閉めてから暫くになる。小窓から中を覗いて見ても、真っ暗でほとんど何も見えない。かび臭さと、廃墟に感じる独特のうら寂しさ、そして若干の不気味さを感じるだけである。シャッターに描かれたイラストの男女は昔テレビコマーシャルなどで地元では知られていたキャラクターだ。男の目の部分が消されているのは偶然だろうが、イマジネーションをくすぐる何らかの魅力がある。「男の眼力ビームが女に外された。」なんてタノシイ妄想もこれまた可能なのである。