
世間から蔑まれ、無視され続けて精神が歪んだ男供のコロニーに裸で入り込んでしまったものだから、肉体以上にこちらの精神が疲れきってしまい、終業後楽しみにしていた筈の読書や映画が全く楽しめず、結句、二重生活を廃止することとした。睡眠時間平均3時間というのもキツカッタ。が、得ることもあった。いわゆる『現場』における人権と安全への配慮というものは、蟹工船の時代とさほど変わらないのだということ。(その証拠は、毎日の工事現場等での事故ニュースで明らかであらう。)そしてもうひとつ学んだことは、過酷な環境で労働し続けてきた人間は傲慢という言葉ですらやさしいくらいに傲慢の限りを尽くし、自分の身を守るため頑な態度を貫き通し、他人の意見は微塵も聞こうとしないということ。もちろんすべての作業員がそう、ということはないが、残念ながら傲慢な人間ほど、現場では影響力が強くなってしまうらしい。自分は、彼を、彼らを反面教師、他山の石として捉えては我が人間形成の一助として生きてゆこう、こう思うに至った。
前段が長くなってしまった。実を言うと、タイトルとは別のことをつらつら愚痴っていたわけだが、全く関係ない、ということもない。自分は繊細で複雑な弐瓶勉作品を味わい得る環境に今居るという喜びを認めたかった訳なのだろう。
さて、『シドニアの騎士』 2巻が刊行された。1巻から改めて読み返し、今までのどの作品よりもエロチックで“萌え”度がアップしているのを感じる。(おそらく『ブラム学園!アンドソーオン』の試行が影響している。)そしてその反面、というか、であるからして、か、シリアスな影も濃くそして深い。
ホントかどうか、詳細は皆様に読んで頂く事とするが、主人公“谷風長道 ”(たにかぜながて)の人間臭いスパイスが効いている。そつなくスマートに生きているように見える他の“衛人”(もりと)達との対比は際立っており、感情移入を深める読者はきっと多いに違いない。この自分はもちろんその一人であり、長道の秘めたる能力の更なる開花を期待せずには居られなくなるのだ。既に次巻が待ち遠しい。
それにつけてもなんと、岐神海苔夫:くなとのりお とか、星白閑:ほしじろしずか、仄焔:ほのかえん とか、どうしてこうも読みにくく、かつイメージ膨らむ名前を考えつく作者であることよ、弐瓶勉は!

シドニアの騎士 1 (アフタヌーンKC)/弐瓶 勉

ブラム学園! アンドソーオン 弐瓶勉作品集 (アフタヌーンKC)/弐瓶 勉
