$旧聞逍遙 インドネシアは自分が思っている以上にバンド活動が活発で、レベルも相当高いらしい。
というのがこの映画を見て思ったこと。

 ストーリーはちょっと稚拙な青春バンド・ラヴ・ストーリィといった感じだが、気になったのはバンドのサウンド。これが結構いい。
 パンク起源のオルターネイティヴ・ロックといってよいだろう。抑圧され続けた内面の吐露、これが音に生き生きとしたエネルギーを与えてくれている。結構聴けるし、カッコいい。
 ギター兼ヴォーカルのアユ・ラトゥナは十分チャーミングでかつ危なかしい。
 キーボード兼ギターのフェディ・ヌリルも音楽職人的雰囲気を持っていてよい。
 ドラムスのアリエス・ブディマンは日本のコメディアンのゴリに似ていて、役どころもお笑い担当。それもまたよし。
 普通の映画として見たなら、昔の若大将シリーズを現代インドネシアで焼き直しした程度と辛口に言わせてもらうが、ロック映画として見たら結構イケル。
お薦めだ。
 このバンド、映画の中のみで終えるはずだったが、人気爆発でこの後も活動を続けることになったという。2006年の映画だから、今も存続しているか知らないが、日本に来ることがあったらちょっと聴いてみたいものだ。

 映画の中味とは直接関係ないが、気になる部分があった。途中で挿入されていた“グル・ギプシー”というバンドの存在。「ガムランとプログレの融合」と紹介されたこの音は、かつて聞いたことのないようなエキゾチック・サウンドで、大いに耳をくすぐった。
 ネットで調べて見ると『Guruh Gipsy』と綴るそうで、スカルノ大統領の息子が在籍していたそうだ。1977年1枚のアルバムをリリースして解散。今は本国のみならず、特に日本で幻の名作として高い評価を獲得しているようだ。

 映画もサントラもグル・ギプシーも通常のショップでは入手できない。残念Death。(映画「ガレージ」はNHK-BSで再放送されるかも知れないけど。)特に“グル・ギプシー”、日本国内で普通に買えるようになったらいいなぁ。