true-美しい日々  小学6年の頃、O君から奇妙なことを聞いた。女の子はソーセージ1本あれば男の子になれるというのだ。全く意味が飲み込めず、O君を質問攻めにした。しかし、訊けば訊くほどO君は口数少なくなり、終には顔を真っ赤にし、怒った様子で行ってしまった。
私は全く納得が行かず、クラスメイトに声を掛けまくった。すると、当事から妙に大人びた感じのしたT君が、「ああ、そのこと?」といって、校舎の外へ自分を連れ出し、周囲を気にしながら
「O君言っちゃったんだな。しょうがない。これはぜったい秘密だよ。」
と前置きして語り始めた。
「先週の土曜日、Uさんの誕生会があり、Mさん、O君そして僕が呼ばれたんだ。そのとき、何とはなしにお医者さんごっこをすることになっちゃってさ。」
 お医者さんごっこ!自分も聞いたことはある。その正体はわからないが、何か淫靡な響きがあって どきり とした。
「Uさんは逃げて行っちゃったんだけど、Mさんは残ってさ、3人で始めたんだ。最初は普通のお医者さんごっこだったんだけど、O君エスカレートしちゃってさ。冷蔵庫にあったソーセージを入れちゃったんだ。」
「えっ、どこに?」
「もちろんあそこさ、Mさんの。」
 晩生の私は事態が飲み込めなかったが、お構いなしにT君は続けた。
「そしたらMさん、そのまま立ち上がって手をそえてソーセージをぷるぷる震わせ、
『わたし、男の子になっちゃったぁ。』って言ったんだ。そこで3人大笑いさ。それにしてもO君は悪だよなぁ。MさんがO君を好きなの知ってて、あんなことさせるんだから。」
 言い終えると同時に始業のチャイムがなり始めた。
 はははは、と笑いながらT君は私の肩をぽん、と叩いて離れて行った。
 全てを聞いて、私はますます分からなくなっていた。
 小6にして成熟した体と雰囲気を持っていて、クラス中の注目を浴びていたMさんが、そういうことをしていたというのがショックだった。4人だけの誕生会というのも、何か怪しい。
でも、何となく気が引けてこれ以上尋ねることはしなかった。


・・・・そんな、子供の頃の思い出が甦るバルテュスの「美しい日々」。
エロスとは少女の姿をしているのではないか、と思える一瞬である。