自身をヘンリー・ダーガーと称したのに、その紹介をしていなかった。リンクのWikipediaに詳しいのでそちらへどうぞ。
 昨年映画が公開され、俄然注目を集めているらしい。
非現実の王国で

 自分がヘンリー・ダーガーを知ったのはそう昔ではない。おそらくこの本からではなかったか。
true-芸術新潮'93.12
true-非現実の王国にて

 1万5145ページに及ぶ叙事詩の正式なタイトルは、『非現実の王国における、ヴィヴィアン・ガールズの物語、あるいはグランデリニアン大戦争、あるいは子供奴隷の反乱に起因するグランデコ対アビアニアン戦争』。
 この中は、主人公のヴィヴィアン・ガールズですら、実体を素描したものではなく、写真や絵画からカーボンで写し取ったものだという。おそらくダーガーは生身の少女に相見えたことはあるまい。そういうケースになろうとしたら、ダーガーは大急ぎで部屋へ逃げ帰ったに違いない。81年の生涯で、女性と関係を持たなかったのではという疑念も消えない。
 自分がすごいと思うのは、ヘンリー・ダーガー以上にこの“アート”を発見した、アパートの大家であるネイサン・ラーナーなる人物。単なる落書きのゴミタメとせず、何かを感じたその嗅覚に恐れ入る。

 この本には他にも興味深いアーティストが紹介されている。
true-マッジ・ギル

 マッジ・ギルは群を抜いて気味が悪い。右は無数の女性の顔が蠢く布で、左は妖しい刺繍がなされたドレス。“ミルナレスト”という霊の導きにより作成できたとマッジは言う。

true-ユージン・ブルチェンハイン

 自分にとって一番インパクトのあったユージン・ブルチェンハインの作品。細かい襞のようなものを持つ怪物が襲ってくる。

true-オーギュスタン・ルサージュ

 最後のぼろ布のように見えるのは、オーギュスタン・ルサージュの作品『霊的世界についての象徴的構造』。細かいモチーフを積み重ねて完璧な左右対称構造に仕上げている。冷媒治療で有名だったというオーギュスタン。われわれとは全く違う世界を見ていたのだろう。

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