なぜ初期ニューオーダーがカオスたるべきパワーを内包し得たかというと、やはりイアン・カーティスの“負の力”によるものだろう。彼の自殺こそがニュー・オーダーをロックそのものへと進化させていたのだ。その証拠に、1998年以降、ジョイ・ディヴィジョン時代の封印を解き、その頃の楽曲を演奏し始めた時期に呼応して、ニューオーダーはセンスのよいポップ・ソングは作り出しているものの、あの魅力的でカタストロフィックなサウンドは作り得ていない。サウンドが円熟期を迎えている、ということなのだろう。メンバーチェンジもあったが、そろそろ終わりも近い筈だ。

 さて、ニュー・オーダーのヘタクソぶりは先に述べたが、バーナード・サムナージョニー・マーとの交流などもあってか、ギターはかなり上達したようだし、ヴォーカルも味わいが出てきたように感ずる。問題はピーター・フックのベース・プレイだ。彼独自のスタイルといってしまえばそれまでだが、一貫してジョイ・ディヴィジョン時代の昔と代わらない。まあ、あ~やって弾いている姿を見るにつけ、微笑ましく、かつ安心してしまうのではあるが    ・・・嗚呼。

true-ナンシー・アンド・シド しかし、ヘタクソの巨人といえば、やはり、あのパンク野郎シド・ヴィシャスだろう。何たってステージでアンプを通して音を出していなかったらしい(注:じゃあ、グレン・マトロックがアンプの後ろで演奏してたのだらうか?)。練習すりゃあ、少しはまともに演奏出来るようになったんだろうが、練習嫌いで、ドラッグとケンカばかりやってたんだからこりゃあ仕方がない。といったトコロ。
シカシ奴のことを見ると、ロックって、別に楽器演奏できなくたっていいんだ。ということがよくわかる。ルックスのみでピストルズへ加入することになった訳だし。
 存在自体がパンク(注:外見のみ。中味は気弱でお調子者な青年だったらしい)、だったのだから困ったモノダ。その代わり、身に纏ったカオスのパワーは自身を含めて誰にも受け止めることができず、結局自滅への路をたどることになる。シドはミュージシャンではなく、あくまでも[商業主義で右往左往させられ、疲れ切って人事不詳に陥った]“ロック”そのものだった。というのがわしの考えだ。

true-シド・バレット シド、といえば忘れちゃいけないもう一人。シャイン・オン・ユー・クレイジー・ダイアモンド:シド・バレット
 彼の場合はヘタクソぢゃあない。サイケデリックなギター・サウンドということではジミ・ヘンドリクスと同じくらい画期的な音を作り上げたといえる。ピンク・フロイドのファースト・アルバム“The Piper at the Gates of Dawn 邦題:夜明けの口笛吹き”が未だに高い評価を得続けているという事実がソレを物語っている。だが、この複雑な社会は彼を月の裏側へと旅立たせてしまった・・・。
 なんというタイトルのビデオだったか忘れたが、演奏し続ける他メンバーをバックに、うつろな眼差しでチューニングしているような音を鳴らし続けているシドを見たことがある。明らかに発病している彼の姿だった。

 ピンク・フロイドのカオスに接したいのなら、先のファースト・アルバムもいいが、2nd“A Saucerful of Secrets 邦題:神秘”の方がお勧めだ。
 プロデューサーのノーマン・スミスがよくここまで、と思ってしまうくらいメチャクチャやらせている。そして、カッコイイ。
 このアルバムのラスト曲“Jugband Blues”がシドの曲で、これがびっくりする位、いいノダ。

true-Pink Floyd with Syd


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