
実際彼等のアルバムを聞いていると、その親しみやすいメロディに思わず口ずさんだり、いっしょにコーラスしてしまったりしてしまう。これは思春期のやわらかい脳みそに刷り込まれたモノへの反応なのかも知れないが、まあ、それだけポップな味付けの曲が多いということだ。

ご存知の通り、ムーディーズはメロトロンのマエストロともいえるマイケル・ピンダーが在籍していたバンドとして有名で、彼の味付けがすなわち『プログレ的』と言われる所以であろう。ピンダーのピアノやメロトロン・アレンジによって壮大なイメージを感じることができるのだ。
ムーディーズのメンバーは器用である。いや、小器用と言うべきか。ほとんどのメンバーが多くの楽器を使用してレコーディングしている。だが、どのメンバーも秀でたテクニックを有しているわけではない。だからライヴでの再現性となるとかなり危ういものとなってしまう。このことは私の大学の先輩(注:先ほどの年長者ではない)が1974年1月来日時のステージを見て「あいつらの演奏はひどかった」と語っていたが、その模様は77年リリースされた『Caught Live+5』で聞くことが出来る。(ただ、音源は1969年ローヤル・アルバート・ホールでのものなので、若干時代は遡るが)ジャスティン・ヘイワードのかかり気味のヴォーカルとギター・ワークが全てをぶち壊していて、レイ・トーマスとジョン・ロッジは存在感なし。グレアム・エッジのドラムは堅実だが特に光る部分はなし。一人マイク・ピンダーのキーボードワークのみが輝きを放っているといった内容なのだ。特に、安定した電源が供給されないと音程すら決められないメロトロンをライヴでここまで操った(しかも60年代に!)ピンダーの技量には頭が下がった。
先輩は「キーボードのマイク・ピンダーがMCを務め、キーボート演奏のみならずギターも演奏していてカッコ良かった。」とも語り、それ以来私はピンダーのファンとなったノダ。それはともかく・・・・
‘70年代、NHK-FMでは午後4時10分から6時まで「軽音楽をあなたに」という番組があり、ここで新譜や注目アーティストのアルバムをまるまるオンエアしてくれていた。そのため自分の好きなアーティストの時には学校を休んでエアチェックしていたものだが、なんとムーディーズの「Days of Future Passed」から「 Seventh Sojourn」までの全曲を1週間かけてまるまるオンエアしたことがあった。夏休み期間だったと思うけれど、あれはすごかった。確か冬に再放送かなんかしたもんだから「NHK-FMはプログレばかり放送してる」という苦情が寄せられたらしい。
ムーディズを嫌いだという人の声には「あの仰々しい説教臭さ」を挙げる人がいた。確かにその通りで、壮大な宇宙をイメージさせるためか、かなり凝ったイントロやエンディングを迎えるアルバムが多い。これこそがムーディーズの醍醐味とも言えるのだが、言われて仕方がないと思える部分もある。ただ、そのサウンドとは裏腹に歌われていることは結構わかりやすいことが多い。歌詞カードを見ると、割と簡単な歌詞で歌われていることがわかる。(関係ないが、この“伝統”は'80年代のULTRAVOX!に受け継がれることとなる?!)
