アール・ヌーヴォーというより、日本の浮世絵の圧倒的な影響が伺える表紙絵が眼を惹く。今現在も発行され続けている家と庭の専門誌『ハウス・アンド・ガーデン』。時は1930(昭和5)年6月(と10月)。両大戦の狭間の時期で、ロンドン海軍軍縮会議が開催されている。しかしこの会議が軍縮そのものより、米英による人種差別と日本への仮想敵国意識というものが如実に表われたイベントだったということも出来るだろう。翌年には満州事変が勃発するという、きな臭い時期でもある。
こんな時節の情勢とは裏腹に、誌面からは明るく自由な風潮を感じ取ることができる。タイル、カーテン、カーペット、家具、暖房器具、電気製品から、自動車、庭手入れ用品、食器、カメラ、化粧品などはもちろん、本物の当時のメイド衣装やグライダー遊びの状況など、当時のハイソサエティの風俗習慣までが生き生きと伝わってくる。
今も昔も、ゴージャスな雑誌には浮世の憂さを暫し忘れさせてくれるという効能があるのかも知れない。

