
数年前までは自社ビル内で大々的にやっていたであろう丸善の絵画展。
今はお焼きやキムチの香り漂う中で、パーテーションで区切っての開催だ。
その凋落振りに哀愁すら漂う展覧会であるが、こちら側には意外な贈り物であった。
「特集:マルク・シャガール版画展」とのことであるが、シャガール作品は全体の15%程度で、他の作家の主にリトグラフが所狭しと並べられている。
自分のなかではシャガール・ブームは20年前くらいにはすでに過ぎており、むしろ以前魅力的に感じなかったルイ・イカール、ジャン・ジャンセンのよさを再認識できたことは自身にとって幸運だったと思う。
ルイ・イカールは以前「女性は美しく描く人だけれど、『置物』っぽい描き方がいまいち首肯できない。」と思ったものだが、明と暗の対比が幽玄ともいえる凄さを秘めていることを発見。
細い線のタッチがわざとらしく感じられたジャン・ジャンセンだったが、額からこぼれ落ちる女性の艶を感じることができた。
ほかに片岡珠子、千住博、ルオー、ミロ、ビュッフェ、そして敬愛する藤田嗣治と並べ方はめちゃくちゃであるが、一点一点は眼福であった。
ほとんどが石版画とはいえ、やはり通常の印刷物とは違う迫力を感じた。
さすがは丸善で、なんとかアートみたいに係員がしつこくついて回り、「分割にしたらなんと月々1万5千。」なんて無粋を言う者もいない。
そして出口左手でだめ押し。田中一村のブーゲンビリアの絵が。
むむう、と唸って腕組みしながら一房198円のバナナを買い求めた自分であった。