昨日「サスペリア」を紹介して思い出したことがある。

 ワタクシメ、この映画、ロードショーで観たのデアル。
 当時の話題作で、劇場は超満員。ワタクシメ、友人とともに立ち見となってしまった。われわれの前には小学6年と3年位の姉妹が雲古座りしていたのだが、観ている内から次々と人が入って来るものだから、後ろから押されに押され、足が姉のお尻辺りに時々当たってしまうようになってしまった。
 姉が振り返ったので、右手を顔の前にまっすぐ伸ばして「すみませぬ」のポーズ。本人は納得して前を向いてくれた。その後はなんとか前の少女達に足が触れぬよう頑張っていたものの、自分の足が自由になるスペースはますます狭まってゆき、少し身動きしただけでもつま先が姉の尻のあたりをタッチしてしまうことに……。
 すると、隣の妹が騒ぎ始めた。
姉に耳打ちしているのだが、声が丸聞こえである。

「後ろの人、痴漢じゃない?」
「違うって」
「だって、さっきから、おねえちゃんのおしり触ってるよ」
「違うの。混んでるからだよ」
「ぜ~っ対、変態だって」

 いつの間にかワタクシメは痴漢から変態に進化すらしていた。
 姉は一生懸命ワタクシメを庇ってくれているが、妹は容赦なしにじろじろ睨み付けてくる。こーなったらもう、身動きすら許されない。

 と、こんな状況で観ていたので、キンチョーと人酔いで、所々しっかり観ることができなかったので、後日改めて見直した次第ではあったが、実はこの日もしっかり堪能はできていた。
 インパクトの強い内容と音響で、注意を引き付け続けてくれていたのだ。ワタクシメにとっては4チャンネル・サラウンドはこの時が初体験であった。自分の頭の後ろから女の声が聞こえた時には、さすがにゾクッとしたものだ。ワタクシメ以外も初体験の人は多かったらしく、
「オオーッ」と声が上がったのを覚えている。

 この少し前「大地震」という映画でセンサラウンド方式が採用され、大いに話題をまいた。これは超特大のウーファーから超低音を爆音で響かせるというもので、劇場中がその振動で揺れたのは想像以上にすごかった。ただ、気分が悪くなる人が続出したため(ワタクシメの隣のネエちゃんなんか、吐いてたもんなぁ)、この方式は「大地震」だけで終わりになったと思う。
 音響技術の飛躍的な向上で、映画が更なる進化を遂げた時代でもあったのである。

 それはともかく、前の姉妹も、ワタクシメへの痴漢疑惑を忘れ、映画にのめり込んでくれたのは有り難かった。今の時代だったら、痴漢疑惑どころぢゃなく、児童虐待やら何たらで、とんでもないことになっていたかも知れない。

 そんなことを、思い出した。

サスペリア・プレスシート
サスペリアのプレスシート