
この年でテレビアニメをテーマに語るとは、自分でもびっくりである。
正直、テレビアニメや特撮ものは小学6年で離れていた。だから、同世代が未だに盛り上がる『仮面ライダー』の中身を、ほとんど知らない。ウルトラシリーズでさえ『ウルトラセブン』で止まっているのだ。
ただ、あくまでも息抜きのひとときを楽しむものとして、さりげなくアニメを楽しむことはある。さくらももこさんの作品などは、たまたまチャンネルが合うと、仕舞まで見てしまうことが多い。(最近この意味で観てしまうのは『みなみけ』である。)
だが、感情移入してまでアニメを観て楽しむ というのは宮崎駿氏の一連の映画作品など、極一部に限られていた。
自分の中で何かが少し変わったかな、と思えたのはおなじみ『エヴァンゲリオン』なのかも知れない。これを偶然観た時は、のめり込む程ではないにせよ、時々楽しんだ。この作品以来、時々深夜アニメをチェックするようになった。
最近で良い出来だったと思えるのは『蟲師』だった。柳田國男の『遠野物語』や折口信夫の『死者の書』を読むような楽しさが『蟲師』にはあった。
さて、クレイモアに嵌ったのは、昨年夏頃の深夜に偶然見掛けたのがきっかけであるが、的確なサジェスチョンをしてくれた艶美どのの影響が非常に大きい。
アニメの内容について、これはアニメファンにはコアで勉強熱心な方々多いので(事実、クレイモア Wikipediaはものすごい情報量で、まるで広辞苑を読んでいるかのようである。まだご覧になっていない方はご一読をお薦めしたい)、自分ごとき新参者があれこれ講釈垂れるのは不穏当と考え、あくまで自分が感じたことを少し語るに留め置くとする。
まず、CLAYMORE クレイモアというタイトルについての推敲である。これはCLAY+MOREという単語を組み合わせたものと解釈した。というのは、CLAYは粘土、土、の意味の他に{(霊魂に対して)肉体}という意味がある。そしてMOREは、{これ以上の, それ以上の}という意味であり、これを組み合わせて『肉体以上の存在』=クレイモア=と理解した。ただ、これはあくまでも自分の推測。間違っているかも知れないので要注意である。
自分は昔から、限られた能力を有する肉体を持つところの人間が、超人的な能力を発揮して相手を倒したり、冒険を続ける、といった内容のものには感情移入できず、しかもこういったモノのほとんどは、妙に同好の士が呼び合い、集まり、群れをなすことが多いため、「群れる」ことの嫌いな自分が好きになれるモノではなかったのだ。
その点、クレイモアは基本的に孤独であり、クレイモアは人間でもないので、超人的能力を発揮しても不自然とは感じられない。
時代設定もヨーロッパの中世であり、場所はどうもイタリア北部のようだと比較的容易に推察できる。
クレイモアの姿形は中世騎士のそれに似ており、自分にはジャンヌ・ダルクの甲冑姿を思い浮かべることができる。ジャンヌ・ダルクの人物像自体はほとんどが史実というよりは民間伝承で、いうなればファンタジーといってよく、彼女の超人的能力=予知能力の話は有名であり、しかも史実が美女の悲劇であることから、彼女のイメージとクレイモア像を重ねることで、より一層リアリティーを感じることができる。という仕組みになっているのではないか、と考えている。
更に自分にアピールすること。それは堅い言葉を連ねて来たところで ムフフ な内容になってしまうのであるが、クレイモア全員が容姿端麗であり、いわゆる「ナイスバディー」だということが大きい。しかもこの「ナイスバディー」、他アニメのように異常デフォルメしたものではなく、許せる範囲内でのモノなのだ。これは♂の我々にしかアピールできないものなのかも知れないが、このエッセンスは大きい。しかも主人公のクレアは自分の好きなショートボブ なのだから尚更である。
また、クレアをはじめとする登場人物のクールで感情を極力押さえた語り口もゾクゾクさせられる。感情を吐露する喋り方より凄味を感じることができるのだ。
(ちなみに『みなみけ』で云うと、三女の千秋の語り口がかなり近い。おっと、よ、余談である。)
最後に自分にとってのリアリティーを感じるアピール部分は、
『 現在クレイモアの戦士は女性しか作られていない。昔は男性も作られたが、妖力解放には性的快楽に近い快感が伴うため、男性には妖力解放を抑制する事ができず“覚醒者”となってしまう』という段。
う~ん、と唸った。われわれ男性は射精時こそが最大の快楽であり、その後は妙に「覚醒者」となる。逆に女性は何度エクスタシーを感じても、まだまだ“この世”に止まっていられる能力を有している。詰まりは「覚醒者」となりにくい肉体なのだ。
こういった人間の根元的本能の部分をさりげなくアニメの要素と取り入れているというのは、自分にとっては納得のいくことで、リアルに感じられることなのだ。
おわりに苦言もひとつ。これは原作者 八木教広氏の技量によるところなのかも知れないが、若い男女がうまく描かれているのに反し、年老いた男女がうまく描かれていないことだ。皺の顔を神々しく描けられるようになればリアリィーはより増すのに違いない。より一層の精進を期待したい。
あと、5軒回ったTsutayaでは、5軒すべてCLAYMOREのDVDは再下段の目立たぬ所に陳列されていた。お探しになるみなさんは、くれぐれもお足下にご注意ください。

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