
調べると1989年邦版ビデオ・リリース後はまったく音沙汰なし。あとはローカルの深夜映画劇場でチョキチョキされた同作を偶然的に拝めるだけという状況。
幸い自分はビデオを持っているので、倉の埃の中から掘り起こし、改めて見直してみたが、昔日の感覚そのままにのめり込む自分を発見!これはやはり時代を超えた傑作という他はない。
『古くさい規律を求める体制に反抗する若者達を描いた…。』
ぬあんて書いたら見る人を限定してしまいそうだ。とりあえずあらすじはallcinemaをご覧あれ。
if もしも‥‥

若いときは革命だの反抗だの反体制だのに憧れたりするものだが、主人公のミック・トラヴィス(マルコム・マクダウェル)もまさにそんな若者ど真ん中だ。
ミックが週末街に出て、かっぱらったバイクを乗り回しているとき、郊外にあるカフェに辿り着き、そこに働く謎の女性に出会い、或るインスピレーションを貰い、彼が常々抱いていた考えを実行へ移すこととなる。
いかにも英国らしい寒々とした曇天の下、タイトなスーツとコートを着た若者がつかの間に自由を満喫する。自分は特にこの辺りが好きだ。

全編を通して気になるのは、宗教音楽とも、クラシックとも、トラディショナルとも、現代音楽ともつかぬ特異なサウンド・トラックである。特にミックが劇中プレイヤーで聴いている音楽は、イントロが賛美歌風の歌で始まりながら、途中からいきなりアフリカン・パーカッションが打ち鳴らされながら高揚感を得てゆくようなサウンドへと変容する、かなり独特なものだ。
音楽担当はMarc Wilkinson マーク・ウィルキンソン。資料では「天才悪魔フー・マンチュー」を手がけているようだが、そちらのほうはどうも印象にない。
ウィルキンソンは「if」直後にピアーズ・ハガード監督によるB級カルトホラー映画『鮮血!悪魔の爪 Blood On Satan's Claw 』でも腕をふるっているようだ。自分は未見だが、先頃CD化されたようだ。「フー・マンチュー」ともども、入手できたらここでまた書いてみたい。
さて、監督のリンゼイ・アンダーソン。1954年に監督デビューしてから、今日まで9作しか映画を撮っていない。全くマイペースという他ない。
リンゼイ・アンダーソンはインドはバンガロアの出身。インドIT産業の中心地。人工616万人。
……なんだかすごい都市のようだ。さすがはリンゼイ・アンダーソン!と思ってしまうのは ……自分だけであらうか。