悪魔の墓場1 実は20年以上わからないでいた。私がかつて見た“ゾンビ”はどの映画だったのだろう?という疑問である。
 害虫駆除のための超音波で死者の脳が呼び覚まされ、そして死者が甦る。という内容のホラー映画。1975年前後に見た筈なのだが、最初に登場した“ゾンビ”の姿(ゾンビのガスリー) のほかはほとんど覚えがない。きっと2本立てのお目当てでない方の作品だったのだろう。
 後年友人知人に聞き回ったが、はっきりしない。登場した“ゾンビ”の真似をして見せたが、みんな気持ち悪がるばかりで全然わからない。おかげでゾンビの真似だけはえらく上達してしまった。タイトルもおぼろげに『悪魔のなんたら』としか覚えていなかったものだから、ますます混乱を極めていた。
包帯男 
 しかし、今年になってやっと謎は解けた。(大げさだなぁ)場所は近所のツタヤ。ホラーコーナーに見覚えのある包帯男のパッケージがあった。
ストーリーを見ると害虫駆除機の記載が…。コ・コレダ!『悪魔の墓場 LET SLEEPING CORPSES LIE』 

 これは予想通りのオマヌケ・ゾンビ・ホラーであった。あらすじは、運転が余りおよろしくないちょっと美人のエドナと、性格が余りおよろしくない古物商(?)ジョージがひょんなことから出会い、目の下に隈を作ったジャンキーな姉を見舞いに行く旅すがら、ゾンビに出会ってしまう……。

ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド ストーリーは短絡的かつ単純。今から見ると明らかにジョージ・A・ロメロ『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』のおまぬけ焼き直し というかパクリ・ヴァージョンといった所か。

 ちなみにこの映画、『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』が日本公開されなかったため、なんと日本でのゾンビ初公開作だったのです。ウォルト・ディスニー作のミッキーマウスの前に、中国製のニセミッキーが先に入って来てしまったような構造だったんですな。困ったもんです。

 それはさておき、この映画決してダメダメばかりではありません。音楽が結構雰囲気あってイイんです。さすがはゴブリンを生んだイタリア映画。DVDはこのサウンドトラックだけを選んで聞ける特典があって、これがまたハマリます。ロビーカードのコレクションも付いていて、これはもう買うしかない?

zombie と、ニセゾンビものを紹介したところで、本物もちょちょっと紹介してしてしまいましょう。
 本家本元パイオニア=ジョージ・A・ロメロ監督作ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド /ゾンビの誕生 NIGHT OF THE LIVING DEAD 』(’68) と、『ゾンビ ZOMBIE: DAWN OF THE DEAD』(‘78)には共にパクリ、ではなく公認された焼き直し版があるのはみなさんご存じでしょう。
New Night Of The Livingdead 『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド/ゾンビの誕生』には【ナイト・オブ・ザ・リビングデッド/死霊創世紀 (英題は同じ)】(’90)が、『ゾンビ ZOMBIE: DAWN OF THE DEAD 』には【ドーン・オブ・ザ・デッド DAWN OF THE DEAD】(’04)が存在します。

ナイト・オブ・ザ・リビングデッド 死霊創世記 】は原作に忠実なカラー作品となっており、よりリアルなゾンビ作りにこだわった作品となっています。監督は特殊メイクの巨匠トム・サヴィーニ。DVD特典を見て初めてトム・サヴィーニが『ゾンビ』に出演もしていた事を知りました。あのショッピングモールに突入してきた盗賊ライダー軍団のリーダー格の男がトム・サヴィーニだったんですね。

そして、【ドーン・オブ・ザ・デッド DAWN OF THE DEAD 】の方では死後数分で甦り、全力疾走で走り抜け、パワー全開!というヴァージョン・アップをゾンビ達が見せつけてくれています。こんな奴等相手だったら生身の人間は生き残る術もない。と絶望的な気分をより増幅させてくれる作品となりました。監督はザック・スナイダー。なんとこれが初監督作。次作『300<スリーハンドレッド>』が今年公開されたばかりですね。
ケン・フォリー ちなみに【ドーン・オブ・ザ・デッド】でもサプライズがありました。【ゾンビ】で主演級のピーター役だったケン・フォリーが、ここではテレビ伝道師役で出演。より注意深く見たらもっとサプライズがあるかも知れませんね。

◎おまけに最近見たダメダメホラー映画
怨廻
まずは『怨廻』
パッケージの写真とうたい文句に負けて借りてみたが、これがサイテーの超低予算映画。ってパッケージ写真のシーンなんて存在しないじゃん。いい女はパッケージだけで、中身は全く違う女優を使うという3流ポルノと同じじゃないか。
最後にちょっとしたどんでん返しはあるものの、ストーリーは平凡で単調。引きこもりのタケシ役の男優の熱演は認めるが、それだけ。
監督は福居ショウジン。『Pinocchio√954』の監督だそうだけど、これまだ見ていない。というか、これ見た後に『Pinocchio√954』を見ようと今は思えない。

もう1本は『ダーク・ウォーター

『リング』『らせん』で知られる鈴木光司氏原作『仄暗い水の底から』のリメイクなのだが、どこにリメイクする必要があったのかと思えるほどストーリーはほとんど同じ。それどころか、わざわざ怖く見せていないのではないかといえるシーンが多く、安直でしかも大げさ。それにニューヨークは大陸性気候で、しかも緯度が高く、梅雨前線は上がってはこない。したがってあんなに毎日雨が降るというのもリアリティーに欠ける。東京のように梅雨があってこそあの暗鬱な風景が生き、このような事件が起こりうるのである。