自慢じゃないが2日連続でブログを更新するのは非常に珍しい。それはともかく。

至高の音宇宙を求めて ブラック・サバス、レッド・ツェッペリン、リッチー・ブラックモアの例を挙げるまでもなく、昔からロック・バンドとオカルトの関係は良く知られている。それは単なるカッコツケという場合もあろうし、逆にマジ過ぎてシャレにならない場合もある。これらのことはロックの誕生がそもそも反体制・反社会のイデオロギーを持ったアウトサイダー達から発生したことと無関係ではないだろう。(今のように産業化が過ぎて一般的なファミリーの中にも浸透してしまったハッピーなロック・ミュージックからは想像し難いことになってしまったが。)
 これから挙げるのはマジ過ぎてちょっとシャレにならない場合である。

1972年。キング・クリムゾンのギタリスト:ロバート・フリップはニューヨークでウォリ(ワリ)・エルムラークという女性と出会ったことから話を始めなければならない。彼女は白魔術の魔女だったとのことだが、彼女と会ってからフリップは黒装束で人前に現れ「魔術と、(※ あなたたちには)信じ難い(※ であろう)神聖な神秘を信仰する。」などと語って関係者を驚かせることとなる。

 フリップが以前から魔術などに感化されていただろうことはクリムゾンの楽曲を聴けば明らかなことではあったが、表だって発表するまでに至ることはなかった。それが改めて明らかにされたということは、フリップのインスピレーションの源泉が夢見がちな少年の心を持ち続けたピート・シンフィールドから、人間の影の部分に真っ赤な光を当てる魔術へと変わったという証拠なのだろうと私は思う。

太陽と戦慄
  そしてそのひとつの形として、謎多き前衛アーティストのジェイミー・ミューアを擁する“太陽と戦慄”クリムゾンが誕生する。以下はこの“太陽と戦慄”クリムゾン 誕生秘話ともいえるオカルト的というべき奇妙な出来事である。

 掲載されているのは、YBO2(イボイボ)のフロント・マンで、FOOL'S MATE初代編集長だった北村昌士氏が著した「キング・クリムゾン -至高の音宇宙を求めて-」(1981年6月1日新興楽譜出版社初版発行)。話はロバート・フリップとビル・ブラッフォードの再会の折のことである。

『 ブラッフォードがイエスをやめ、これから全く新しいことを始めようとしている不安定な状態のバンド、キング・クリムゾンヘ加入することを決めたきっかけには、ある魔法のような偶然が作用している。

 アメリカでフリップに会ってから約二ヵ月後の(※ 1972年)五月中旬のことだ。イエスはアメリカ公演を終え六月のニュー・アルバム録音を控えた短い休養期間にあった。ビルはこの間、イエスのメンバー達と離れて気ままに休息を楽しんでいた。ある日の午後、思い立って車に乗りドーセットにドライヴに出かけたところ、とある寂しい場所で道がわからなくなってしまった。そこは人家のまるで見当たらない人里離れた丘陵地帯だった。しばらく行くとやっとみすぼらしいコッテージが見えた。ピルは車を降りると道を尋ねるためそのコッテージのドアを叩いた。するとどうだろう。ドアを開けて中から現われた人物は何とボブ・フリップその人であったという。

「やあ、君の来るのを待っていたよ」

などとこともなげに平然と、まるで魔法使いの老人のように悟った口調で迎えたフリップ。信じられないような話だが、本当にあったことらしい。そこでフリップはビルに飲み物を勧め、クリムゾンヘの参加を誘った。
折りからイエスを脱けることを考えていたビルは、家に帰ると決断し、フリップに電話した。
「六月、イエスのアルバムのレコーディング(※ Close To The Edge “危機”のこと)を終えたらセッションを始めよう」
こうしてビル・ブラッフォードの参加が決定した。』 [※印は筆者注]

 と書かれている。ここでは控え気味に“偶然”“信じられないような話”と表現されているが、私は必然としか考えられないのだが、みなさんはどう考えるだろうか。