熊座の淡き星影1

 この映画を最初に見た時、前衛的なつくりだな。という印象を持った。多分白黒映画で“ズーイング”(画面のズームイン、ズームアウト)を多用していたことがその主な原因だっだと思う。そしてそのことが気になって映画の内容をよく理解できなかった。
 結局後日ビデオで見直し
「ああ、近親相姦の姉弟の物語だったのだな。」
とやっと気づいた。それくらいの印象である。
 先の“ズーイング”についてはさほど気にはならなかったものの、
「これは名作だ!」などと唾を飛ばして叫ぶほどの作品だとは思えない。
 ただし、当時も今も禁忌とされる内容をクラウディア・カルディナーレとジャン・ソレルはよく演じ切っているとは思う。
熊座の淡き星影2


 そして何よりもヴィスコンティ独特といえる、貴族階級の堕落・腐敗・倦怠・そして、よく言われるところの“滅びの美学”はここでも健在である。
 
熊座の淡き星影3


 かなりキナクサイ内容であるにも拘わらず、さらっと描けてしまうことこそが、ヴィスコンティが名匠と呼ばれる所以なのだと思う。

英題:SANDRA: OF A THOUSAND DELIGHTS
制作:1965年
日本公開:1982年