今回も私にしては最近の映画を。
ウォン・カーウァイ、スティーブン・ソダーバーグ、そしてミケランジェロ・アントニオーニの3篇のオムニバス作品『愛の神、エロス eros 』。
●エロスの純愛~若き仕立屋の恋~ ウォン・カーウァイ監督 
●エロスの悪戯~ ペンローズの悩み~ スティーブン・ソダーバーグ監督
●エロスの誘惑~危険な道筋~ ミケランジェロ・アントニオーニ監督
の短編3作品で構成されている。
  ウォン・カーウァイはアジア的なエロスの世界をヌードなしで見事に描き切っているし、スティーブン・ソダーバーグも『KAFKA 迷宮の悪夢』以来ともいえる不可思議な物語を描出している。
EROS


 しかし、なんと言っても目を引くのはミケランジェロ・アントニオーニの名前だ。今でも撮っているのか!と驚愕の一言。1912年生まれの巨匠は今年で94歳。この映画製作時でも91~2歳である。'82年の「ある女の存在証明」以来であるから新作としては24年振りに見たことになる。クールで予見不可能な展開と、大自然への畏敬の念は健在。ヌード・オンパレードで女性美への興味も未だ強く持ち続けている様子である。どこで撮影したか分からないけれど、背景の景色が美しい作品でもある。思わず感傷に浸ってしまい、「赤い砂漠」「欲望」「砂丘」のビデオを引っ張り出して来て見続けてしまった。おかげで少し疲れたなあ。でもその夜はよく眠れました。

 映画は3篇とも大変満足したのですが、DVD特典映像のインタビューを見て不快を禁じ得ませんでした。それは~若き仕立屋の恋~で主演をしたコン・リーなのですが、
『見終わった時に、人生というものはいつまでも存在しているようなものじゃない……ということを感じていただきたいと思います。時間というものは限られていて、何かやりたいと思うことがあって、しかもそれが正しいことだと思ったら、すぐに行動に移していただきたいと思います。「いずれやればいいさ」と思っていても、明日世界が変わってしまうかもしれません。そうなったときに後悔しても取り返せません。そうならないために、時間を大切に、何かやりたいことがあったら、すぐにやっていただきたいと思います。』(公式サイトから引用)
 と言っているのですが、これが映像と併せて見ていると、上から見下ろすような物言いで、非常に傲慢不遜な様子。観客に説教しているようにさえ感じられたので、コイツは何様ダ?と感じてしまったのです。そんな偉そうなこと言うなら、お前の演技、高慢な娼婦役はハマッテいたけど、病気でやつれた様子は全くなっていなかったぞ。もっと時間を大切にして芸を磨けよ! と言ってやりたくさえなりました。たぶんアジア一(イチ)扱いにくい女優なんじゃないかなあ、監督が気の毒だなぁ、とまで考えてしまった映像でありました。

愛の神、エロス eros 公式サイト