少年が、熟睡している男の部屋を物色している。コソ泥の話かと思ったら、どうも様子が違うようだ。ペンライトで照らし出し、盗んだのは使い古しの箸一膳。少年は家の中の別部屋に逃げ込み、箸の臭いを嗅いで、これの持ち主が何を食べたのか分析し、ノートに書き込んでいる。

 …しょっぱなからかなり変わったイントロである。正直最初の内は、展開のなさに退屈しそうになりながら眺めていた。しかし、辛抱強く見続けている内、徐々に徐々にその理由が分かってくる。分かってくると、なんとも切ない感情がよぎることとなった。
4:30
シンガポール版DVDパッケージ。ホラーっぽく見えちゃいますね。

 少年は、母親が北京へ出稼ぎに行っていて、一人シンガポールで暮らしている。(どうも父親は居ないようだ。)
 男は韓国人の叔父(?)で、何らかの事情でシンガポールを訪れて来た。理由は不明だが、自殺願望がある。

 二人の共通項は、孤独であること。意思疎通がうまくないこと。
 ぎこちない二人のぎこちない家庭生活。
 そして、やっと、やっと、お互いが認識できはじめた時に……。

 映画は、この二人以外はほとんど描かれていない。全く色気もそっけもない。でも、しずかに静かにじっくりと胸に沁み込む映画でありました。
 全編を通じて流れる美しい音楽が印象的。(私は勝手に“タラのテーマ”と名付けた。何故かは見ていただけると分かります。ジョークですよ!)

〔監督・原案・脚本〕ロイストン・タン
〔脚本〕リャム・ヨー
〔撮影〕リム・チンリョン
〔音楽〕ホアラムポン・リディム
〔出演〕シャオ・リユアン、キム・ヨンジュン

 先月BSで見たロイストン・タン監督最新作。国内公開されていないらしい。DVD化を望む。