
大いばりで奥さんに注射させているこの男は『石狩平野』『お登勢』『蘆火野』『茜いろの坂』で知られる作家=船山馨。後に昭和を代表する文豪となる人であっても使い捨ての“道具”扱い。そのため寝ないで書き続けられる、元気になる道具いや「お薬」ヒロポンを打たねばならない。(ヒロポンといっても村上隆の作品ではない。多分語源は同じだろうが)
ヒロポンは覚醒剤で戦後間もなくまでは一般的だった。理由は戦争中軍が使用していた覚醒剤が戦後大量に余ったため、それが一般庶民まで流れてしまったもの。当時画家や作家など文化人にまで「元気になるおクスリ」「ヒロポン1本で仕事がはかどる」と蔓延していた。
(昭和23年9月 東京・中野の自宅にて撮影)