自分はこの『青の稲妻』(中国語タイトルは『任逍遥』。台湾のヒット曲らしい。)で初めてジャ・ジャンクー監督の作品を見た。仕事につかず、当然カネもない中国地方都市の若者が淡々と刹那的に生きる姿が描かれている。 主人公シャオジイ役のウー・チョンは、何を考えているかわからない無表情な青年役を淡々とこなしているところがイイ。ウー・チョンは全くの新人だそうだが、こういう役柄にはぴったりの役者だろう。けれど、テレビのインタビューか何かで、変に人間的でチャーミングな笑顔などを見てしまったら、 ウー・チョンの次の作品は見たくなくなる。なぜかそんなことを思ってしまう存在だ。
映画を見終えてから、この映画は大島渚監督作品『青春残酷物語』とすごく似ているな、と感じた。悲劇ではあるのだけれどなぜかあっけらかんとしていて妙に軽く、悲惨なエンディングがなぜか引きずらない所。そして、未来を感じられない閉塞状況の時代の中に生きる若者像。この2点が同種のもののように自分は感じた。但し「青春残酷物語」は1960年という何に於いても急成長の時代であり、近代的な問題点が噴出した時代ではあっても、若者達が生きてゆくには十分余裕や選択肢が豊富であったであろうということに対し、『青の稲妻』は2003年という今現在のことであり、どん詰まりの未来がすぐ近くにある分、「青春残酷物語」より救いが少ない状況なのではないかと思う。そんな先が見えない重い時代を生きる若者であるからこそ、より無気力で軽い生き方へと向かうこととなるのだろう。ジャ・ジャンクー監督は集中できない、本気になれない時代、というようなものを描き切っているように思える。
ちなみに英題“Unknown Pleasures”は、かのJoy Division(New Orderの前身バンド。リーダーのイアン・カーティスの自殺により突然消滅した。)の1stアルバムと同じタイトルである。無機質で重い音がループするアルバムとこの『青の稲妻』のイメージが重なることに驚かざるを得ない。
最後に、これは全く映画と関係ないことではあるけれど、シャオジイの友人役のビンビンが自分の友人の川筋さんそっくりなので驚いた。顔や体格、雰囲気と声、そして話をするタイミングまでが似ているのだから参ってしまった。川筋さん。お元気ですか?