杉浦日向子さん

 20年前、『合葬』を読んだ時は本当に驚いた。こんなすごい漫画を書く女性は、どんなものすごい風貌をしているのだろうかと、写真を探し眺めたら、意に反して美人であった。しかもぽっちゃり和風美人で好みのタイプ。それ以来彼女の漫画はすべて買いそろえた、荒俣宏と結婚するまでは。というのは冗談だが、しかし隠居宣言後の江戸本はほとんど読んでいない。自分にとって杉浦さんは漫画の人であったのだ。
 杉浦さんは今の季節にはぴったりな冷ゃっと怖い漫画も書いている。「百物語」は特にお薦めだ。余り説明しようとせず、いやむしろ淡々と語り進める『怪異譚』は本当にコワイ。
 NHK「お江戸でござる」が終わってしばらく見ないな、と思っていたら亡くなってしまっていた。そろそろまた漫画書いてくれるのではないかと期待していたのに、本当に残念である。合葬、いや、合掌。
(2005.7.26.朝日)