「 お父さん!

    お父さんは、喘息とかあるんじゃけん、

    一番に打たんといけん! 」


久しぶりに揃った、わが家の茶の間に

娘の言葉が響いた・・。


呆気にとられてると、

妻が 「 そうなんよ、お父さん、何回すすめても、打ちたくないって言うんよ・・」


助け舟なのか、泥舟なのか

それでも、言葉を失ったつれあいに、

呼吸を取り戻す、間を与えた。


「 お父さんのキモチは、これなんだ。 」


茶の間の長い座卓の回りに、

自分とワイフ、

そして長女夫婦と孫娘ハルちゃんが

座卓に用意されてる、焼肉を眺めて、

みな押し黙り、

テレビから流れてる、見知らぬ南国の島の

ゆったりとした演奏と、風景に、

みな 聴くともなしに、聴き、

みな 見るともなしに、見てるしかない。


「 こんな キモチって、いったい何!? 

    何のカンケーがあるん!? 」


相変わらず、語気ツヨメ。


「 今、世界中人々が、有意留守のことで、

規制やら、休業やら、自粛やら、

はたまた 誹謗、 中傷、陰口、

告げ口でいっぱいだ。

お父さんは、そんなん1抜けた!

ってキモチなんだ。

それと、お父さん、喘息といっても、

COPDという病気で、

治る見込みない病気なんだ。

70まで生きれるかどうかって、病院で言われたんだ。

そんなのに、身体に得体のしれないもの、

入れたいなんて、こわくて 思わない。

・・ ・   」


いつしか、長女は涙いっぱいためていた。


今、振り返ってみると、

そんな、具体的な理由は、ありはしなかった。

猫に睨まれた、子鼠の 理屈なしの口任せの

デタラメかもしれない。

ただ、そんなもの 身体に入れたくない!

それだけのことだった。


「 めぐち、ハルちゃんに子宮頸がんワクチンとか、打たせたいなんて思うか? 」


「 打たせたくは、ない・・」


                                    ○


三年前のこと、

なんだかずいぶん昔のことのように、思い返せる。


ダイアモンド プリンセス号

沖合いに停泊をさせられ、

うらめしく、船上から陸地を眺め、

ニュース映像をひとごとようにながめる・・

どこにもやり場のない、きもち。


一部のお店の一部のスタッフのみ、

隔離させられ、テレビのレポーターの

マイク向けられ。


町の最初の感染者として、どこのだれだと、うわさにヒソヒソ、家を捨てて、町を去った人たち。


守ってくれる、医療従事者の家の門に、

出ていけ!落書き。


日本の津々浦々、祭という祭を、体育祭までも、自粛 という強制・・


おかしかないか!?

声も あげられない。


家族の隙間まで、アクリル立てて、

ニッコリ笑顔は マスクの内側。


疑心、疑心と 暗い鬼。


陰謀ですよと、正論が言い、

社会のためだと、分裂を促す。


果たして、世界の どの国の、

世界のいったい誰の、

思惑だったことなのか?

そのとおりに、なったのか?

それとも、単なる 社会正義だったのか?


ワタシは、一つ、学びました。

一つ、気づきました。

それは、確かに、おかげさまです。


それが、いったい何か?

そのうちの一つは、

それを、口にしないことです。