列車は、日付の変わる少し前に、終着の大阪に着いた。
真夜中とはいえ、大都会の駅は、華やいでいて、一日の終わりと、新しい一日の始まりに切れ目なく活動している。
終着ホームを降りて、人々の流れにまかれながら、目指す次のホームに向かう。
乗り換えは、15分程度だったろうか。
夜行列車 急行 [ 立山 ]だと思う。
今は夜行列車は珍しく、まして急行で夜の間に目的地まで運んでくれる、急行列車は、旅をする若者にはうってつけだ。
紫がかった濃い紺いろの列車は、幅も広いけど、背が高い。
中央が丸く盛り上がり、レトロでありながら、旅の気持ちも盛り上がる。
窓も心なしか、高くほの黄色く灯る蛍光灯の灯りは、明る過ぎず、ほっとするような落ち着きがある。
始発の列車の席は、空いている。
背もたれの高い座席は、妙に座席の間が広い。
その理由は、すぐにわかった。
はす向かいの座席の、スキーウェアのままで、毛糸の帽子までかぶってる若い男女のグループが、わいわいと座席のセッティングをしている。
まず、進行方向に向いてる座席の片側を座席の下のレバーを下げて、180度向きを変える。
すると、2つの座席が対面になる。
それから、また座席の下のレバーを引いて、背の高い背もたれを下げると、
なんと、座席面がつながり、畳二帖の座面が出来上がるのだ。
カーテンこそないが、充分に脚を伸ばして眠れる列車なのだ。
なんとも、素敵な時代だったと思う。
片や、若い学生( スキー同好会かな )たちと
こちらも若い男ではあるが、男一人。
互いに、気を使い、コンタクトなどなしで、
夜行列車は、暗闇の中、目指す北陸に向けて、進んで行くのだった。
寒くも熱くもなく、快適なれど、
文庫本を読めるほどの明るさであるが、
眠るには、明る過ぎることの不満は、
国鉄改め、JRの方々に失礼だろう。
ほとんど意味なく、分厚い全国時刻表の表紙は、バッグの中で傷んで、味があるのだが、
左下の 流れ星🌠のマークと キャッチフレーズ
「 いい日 旅立ち!✴️」のロゴが、
なんでか、しっくりこないんだな。
ま。 しらぬまに、
フルムーン
上原謙 高峰三枝子 遠き二人が、
我等、夫婦となってる、時の流れよ・・