そうだった。


前の年の春、自分の給料で欲しかったカメラを手にしてたのだ。


ライツ ミノルタCL


高校の頃、雑誌の広告で憧れてた。

当時、すでに時代を遡った、旧式なレンジファインダーカメラ。


当時、若者からシニアまで、空前のカメラブーム!

一般向けな手頃なコンパクトカメラと

中堅から上級向けカメラは、なんといってもペンタ型一眼レフが主流の時代。

そんななか、このカメラは、コンパクトで、シンプルでベーシックで、

かつ高級機の趣にあふれていた。


街のカメラ店のセールス時期に中古機、

5,5万円で僕のものになった。

週末には、そのカメラを手に倉敷の美観地区に出かけ、コダクロームに始まり、

モノクロフィルム入れて写真の光の面白さにはまっていったんだ。


そのカメラは、デジカメの登場頃まで、

僕の相棒となり、僕の記憶の装置となった。


朝もやの 光の粒、

冬枯れの小枝にきらめく雪氷の結晶、

雨上がりの、アスファルトを照らすまばゆい朝の日の輝き・・


一枚一枚が、現れた光と、撮影する 想い、

現像されて、出会う光の一枚、

ことあるごと、見返す 一枚、

型紙に綴じられた、ポジフィルム、

蛍光箱にのせて、フィルムルーペで覗くと、ありありと その光 が甦る。

プロジェクターで、スクリーンに映すと、

つい半月前のことが、懐かしく、ほろりと甦る。


藤原新也さんの一冊の本から、

僕の青年期が始まったのかもしれない。