暑い夏が終わり、間を置かずして寒い冬がやってくる。昨日まで半袖シャツとノーネクタイ。いわゆるクールビズで過ごしていたのに急に寒くなるのでクールウィズ鼻水だ。
・・・別にうまいこと言おうとしたわけではない。
ともかくだ。急な冬の到来に対応できていなかった俺は少しでも暖まるために鍋をすることした。会社帰りにスーパーへと立ち寄る。すると、入ってすぐのところに鍋のもとコーナーが設立されていた。考えることは皆同じなのかもしれない。普段は出汁だけとってパック肉をしゃぶしゃぶがてら酒を飲むというスタイルだが、たまにはこういうのを使うのも悪くない。そこで様々なパッケージの中からなんとなく手に取ったのは豆乳鍋の素だった。
具材と酒を買い込み、家へと辿り着く。ほどよい運動をしたはずなのに、体が暖まらないのはなぜだろう?そして、全てを鍋にぶちこみ一気に煮込む。煮込み終わるまでの間に俺は酒を飲んでいた。ここで一つ。俺は酒に強い方ではない。そして、空きっ腹に酒を流し込めば頭のいい読者の諸君ならもうおわかりだろう。
うん、この後の記憶がいっさいない。
「・・・さい、・・・さい」
誰かに呼び起こされる。気がする。残念ながら俺は一人暮らしだ。起こしてくれる人なんて誰もいない。というわけで、もう一眠り。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ちょっと待て!
俺はがばりと起き上がり時計を見る。八時。よかった、まだ間に合う時間だ。俺はあくびをしながら机の回りを見る。どうやら、食べてる途中で寝てしまったらしい。ちゃぶ台あるあるである。時間があるといっても、片付けていたらいい時間になる。
「そろそろ起きるか」
「おはようございます!」
「はい、おはよう」
ん?俺は今誰に返事をした?
慌てて声のした方向であるちゃぶ台側を見る。誰もいない。あるのは空っぽの鍋。空き缶。箸に器。こぼした豆腐。
「気のせいか?」
「気のせいじゃないよ!」
今度ははっきりと聞こえた。それはテーブルの上の
「ココ、ココ!」
こぼした豆腐と思っていたものだった。
えっと、まだ酔ってるのかな?頬をつねってみる。・・・いひゃい!
「どうかしましたか?」
こぼした豆腐のようなそれはよく見ると、顔や手の輪郭があった。まるで真っ白なパペット人形を潰したかのような形だ。
「えっと、君はどなた?」
「ソミホちゃんです!昨日、ご主人が名付けてくれたんですよ?」
「そーなの?」
覚えていない。まるで酔った勢いで好きでもない職場のおばちゃんと朝を一緒に迎えた気分だ。
「仕方ないですね。では、ソミホちゃんがもう一度説明してあげましょう!」
というわけで、以下。ソミホちゃんの説明(要約)。
一つ目、ソミホは豆乳鍋から生まれたホムンクルスである。
二つ目、どうして生まれたのかはよくわからない。
三つ目、ソイミルクホムンクルス。略して、ソミホ。命名、俺。
さっぱりわからん。
とはいえ、放置するのも感じ悪いしな。
「昨日もお話しした通り、私は豆腐と水と塩さえあれば生きていけますので」
どうやら、昨日の俺は新たな住人を暖かく受け入れたらしい。ま、でも、安上がりでいいかもな。
こうして、俺と豆腐との奇妙な暮らしが始まった。
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