戦争と平和 エピローグ(16ー1)ピエールとナターシャの夫婦の会話。二人は完全に理解しあっている | 気ままな日常を綴っています。

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いつか静かに消える時まで。。
一人静かに思いのままに生きたい。。

(物語)

ナターシャも、夫と2人きりになると、夫婦の間だけで通じるような話し方で夫と話をしていました。

彼らが2人きりになり、ナターシャが幸福に潤む目をいっぱいに見開いて静かに彼の前に寄ると、ふいに、素早く両手を彼の頭に回して、強く抱き締め「もうすっかりあたしのものよ❗️もう離さないわ❗️」と言ったその時からーーその瞬間から、同時にまるで違う事柄が語られるという事からして、既に論理の全ての法則に反する、あの夫婦間の話が始まったのでした。

この多くの事を同時に話し合う事は、はっきり理解する事を妨げなかったばかりか、反対に互いに完全に理解しあっている事の最も確実な証拠なのでした。

 

ナターシャはピエールに、兄の日常の生活や、自分がどんなに苦しい思いをし、夫の留守の間生命の火が消えたようになっていた事や、マリィをますます好きになった事や、マリィが全ての点で自分より優れている事などを語りました。

そう言いながらもナターシャは、それでも夫にはマリヤよりも、他のどんな女性よりも彼女の方が良いと言ってもらいたい事、特に今は、ペテルブルグで多くの女の人達を見て来た後だから、もう1度改めてそれを言って貰いたい事を、真剣になってピエールに打ち明けました。

ピエールはナターシャの言葉に答えながら、ペテルブルグで夜会や晩餐会で、婦人達の相手をするのがどれ程辛い事だったか、という事を彼女に話しました。

 

「ああしたご婦人方との話し方をすっかり忘れてしまってな。。退屈なだけなんだよ。特に何しろ忙しかったものだから。。」と、彼は言いました。

ナターシャはじっと彼の顔を見つめて、話を続けました。

「マリィは本当に素晴らしい人ですわ❗️子供達を理解する力と言ったら、まるで子供達の心の中だけを見ているみたいなのよ。昨日だって、ミーテンカが我儘を言いだすと。。」

「うん、あの子は父親そっくりだな。」と、ピエールは口を挟みました。

ナターシャは、何故彼が、ミーテンカとニコライが似ているという指摘をここで挟んだのかを悟りました。

彼は、義兄との口論の成り行きが不愉快で、それについてのナターシャの考えを知りたかったのでした。

「兄にはああいう欠点があるのよ。一般に受け入れられない事には絶対に同意しない、というね。でも、あたしにはわかってるわ。貴方にとって大切なのは、『活動舞台を開く事』ですものね。」と、いつかピエールが言った言葉を繰り返しながら、彼女は言いました。

 

「いや、要は。。ニコライにとって思想や議論はーー遊びなのさ、時間つぶしみたいなものなんだよ。ご覧、蔵書を集めたりしてるけど、買った本を読み終わらないうちは新しい本を買わない事を原則としてるだろう❓」と、ピエールは言いました。

「じゃ、貴方は兄にとって思想は遊びだとおっしゃるのね。。」

「そうだよ、だが僕にとっては思想以外の全てが遊びだな。ペテルブルクに居る間、全てが夢を見てるみたいだったよ。思索に心を奪われると、他は皆遊びになってしまうんだよ。」

 

そしてピエールは、また彼の心を捉えている事を話し続けました。

「我々は考えるべきじゃないなんて、ニコライは言うけれど、僕はそんな事は出来んよ。ペテルブルグで感じた事などは、無論言わんが、君には言えるけど、僕が居なかったらすっかりダメになる所だったんだよ。船頭ばかり多くてさ。でも僕が皆をまとめる事が出来たんだよ。それに僕の考えは極めて単純明快なんだよ。だって僕は、これこれに反対すべきなどとは言わんものな。我々だって間違う事がある。だから僕はこう言うんだよ、善を愛する者は手を結べ、そして善の実践という1つのスローガンを掲げよ、とね。ゼルキイ公爵は立派な人物で、頭が切れるよ。」

 

ナターシャは、ピエールの思想が偉大な思想である事を疑うつもりはありませんでしたが、1つの事が彼女を当惑させていました。

『社会にとってこんな重要な人物が、同時にあたしの夫だなんて❓どうしてこんな事になったのかしら❓』

『夫がこのように、皆より聡明なのは本当なのか❓それをはっきり決められる人は誰と誰かしら❓』と、彼女は自分に尋ねて、ピエールに非常の尊敬されている人々を頭の中で数え上げてみました。

彼の今までの話から推して、彼がプラトン・カラターエフよりも尊敬している者は誰も見当たりませんでした。

 

「あたしが何を考えているか、わかります❓」と、彼女は言いました。

「プラトン・カラターエフの事ですわ、あの人ならどう言うかしら❓貴方に賛成するでしょうか❓」

ピエールはこの質問に少しも驚きませんでした、彼は妻の考えの歩みを悟りました。

「プラトン・カラターエフか❓」と、彼は言うと、この問題についてのカラターエフの判断を推しはかろうと真剣にじっと考え込みました。

「彼は理解できんだろうが、おそらく、よし、と言うだろうよ。」

「あたし、たまらなく貴方が好きだわ❗️たまらなく❗️」と、ふいにナターシャは言いました。

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(解説)

ここはねー。読んだ直後に解説を書いていなかった部分なのですよ。

アップ直前に付け焼き刃で書いてます。

 

ピエールがやっとペテルブルグから戻ってきて、ごく日常的で互いに依存的に愛し合う夫婦の会話を交えて、ピエールが『今のロシア政府のあり方に対して物申す』という事が、しかもそれをピエールが主体となって進めて行くということが果たしてどうなのか❓というナターシャの疑問、そして何よりもピエール自身も疑問を持っている、要するに不安があるのだという含みを表している部分だと思いますね。。

 

愛する家庭を犠牲にするかもしれない『政府を監視する為の結社』をピエールが主体となって結成する。。ナターシャは夫の思考を理解しながらも、自分の感情はちょっと横に置いておいて、果たしてそれが適切なのか、それを誰に判断してもらえば納得するかしら。。と思っているのですね(内心は、そんな事をピエールが主体となって行動する事を誰か止めて欲しいと思っているのでしょうかね。。そういう感じもしますね。当然ですね、愛する子供達も居ますし。)

そこで、ピエールが最も尊敬するカラターエフだったら賛成するだろうか。。❓とナターシャは問いかけます。

ピエールは、おそらくカラターエフは農奴の立場であるし、自分の言わんとすることは理解できないだろう。。しかし『よし❗️』と言うのではないか。。と答えます。

ナターシャはそれを聞いて、(ピエールを引き止めるかのように)「あたし、たまらなく貴方が好きだわ❗️たまらなく❗️」と言うのでした。

 

しかし、ピエールはこの直後のチャプターで、カラターエフはおそらく『いいよ』とは言わんだろう。。と言い直しています。

カラターエフの見えている世界では、ピエールの言う事は理解の外だから。。と言うのと、やっぱりナターシャの(ピエールにそんな事をするのは止めて欲しいと言う)気持ちが通じたのですね。。

しかしピエールは。。