戦争と平和 エピローグ(11ー2)ピエール、ようやくナターシャの元に帰り着く。 | 気ままな日常を綴っています。

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いつか静かに消える時まで。。
一人静かに思いのままに生きたい。。

(物語)

すると、途端に彼女は、この2週間に嫌という程味わされた、待つ身の苦しさを、まざまざと思い出しました。

彼女の顔に輝いていた喜びがにわかに消えて、眉が曇りました。

そして非難や意地悪い言葉が堰を切って、ピエールに襲いかかりました。

「そうよ、貴方はいいわよ、そりゃ嬉しいでしょうよ、いい思いをして。。だけどあたしはどうなの❓せめて子供達の事くらい考えて貰いたいわ。あたしはお乳をやろうにも、お乳が止まってしまって。。ペーチャは死にかけたのよ。それなのに、貴方だけ楽しい思いをして。。ええ、さぞかし楽しかった事でしょうよ。。」

 

ピエールは、これより早く戻る訳には行かなかったのだから、自分が悪くない事は知っていました。

彼女の方からのこの爆発は、はしたない事で、2分もすれば収まることを、彼は知っていましたし、それよりも何よりも、自分の心が嬉しさで弾んでいる事を、彼は知っていました。

彼は笑い出したい所でしたが(それはしてはいけない事で)、憐れっぽい怯えた顔を作って、上体を屈めました。

「戻れなかったんだよ、嘘じゃないよ❗️ペーチャはどうなの❓」

「もういいわよ、参りましょう。本当に気が咎めないのかしら❓見ていただきたかったわ、貴方の留守の間、あたしがどんなだったか、どんなに辛い思いをしたか。。」

「君の体の具合は❓」

「いいから、行きましょう。」と、彼の手を離さずに、彼女は言いました。

そして2人は、自分達の部屋の方へ歩き出しました。

 

ニコライ夫妻がピエールを探しに来た時、ピエールは子供部屋で目を覚ました乳飲み子を右手の大きな掌の上に乗せてあやしていました。

歯の無い口を開けた赤ちゃんの丸々太った顔が嬉しそうに笑っていました、嵐はもうとうに過ぎていました。

そして感動に潤む目で、夫と息子を見守っているナターシャの顔に、明るい嬉しそうな太陽が輝いていました。

 

「それで、フョードル公爵とはすっかりお話を済ませたの❓」と、ナターシャは尋ねました。

「うん、とてもうまく行ったよ。」

「しら、赤ちゃんの頭、ちゃんと座っているでしょ❓本当に、この子にはびっくりさせられましたわ❗️」

「公爵令嬢(※たぶん、ピエール宅に居候していた公爵令嬢の事と思う)に見せたのか❓本当かい❓令嬢がこの子に夢中になったって❓」

「ええ。。そりゃもう、おかしいほどよ。。」

 

この時、ニコライ夫妻が入って来たのでした。

ピエールは赤ちゃんを抱いたまま、身体をかがめて彼らと接吻を交わし、彼らの問いかけに答えました。

しかし、どうやら、語り合わねばならぬ問題がたくさんあるのに、小さな頭巾に包まれた頭をくらくらさせている赤ちゃんにピエールはすっかり気を奪われているようでした。

「なんて可愛らしいんでしょう❗️」と、伯爵夫人マリヤは赤ちゃんの顔を覗いて、あやしながら言いました。

「私にはわかりませんのよ、ニコラス。どうして貴方は、この天使のような赤ちゃんの可愛らしさがわからないのかしら❓」

「わからんな。。どうしても。」と、冷ややかな目で赤ちゃんを見ながら、ニコライは言いました。

「肉の塊じゃ無いか、行こう、ピエール。」

 

「でも、本心は、本当は優しいお父様なのですよ。」と、夫の弁解をしながら、伯爵夫人マリヤは言いました。。「但し、1年か、もうちょっと過ぎたらですけれど。。」

「へんねえ。。ピエールはお守りがとっても上手ですわよ。」と、ナターシャは言いました。「手が赤ちゃんのお尻を乗せるのに丁度良く出来ている、なんて言うのよ、ほらね。」

「なに、その為だけじゃ無いさ」と、ふいにピエールは笑いながら言うと、赤ちゃんを持ち替えて乳母の手に渡しました。

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(解説)

ピエールの帰宅を喜ぶのもつかの間、我儘なナターシャは、ピエールの帰りが遅かった事を、あたかも遊んでいたかのように詰ります。

しかし、ピエールも彼女が本気でそんな乱暴な事を思っているのではなくて、自分が居なくて寂しかったからだ、と微笑ましく思います。

本当にピエールはナターシャを愛しているし、性格も優しいのですね。。

普通の男性だったら、ここで『別れる切れる』の大げんかでしょう。。大半はね。

そこをうまく『自分の気持ちをナターシャにおいてみる』事によってうまく切り抜けるピエールです。

そしてね、ナターシャもやっぱりピエールが遠方まで出掛けてお仕事をして来てくれた事を感謝もしていると思うのです。

言葉の裏で、二人の信頼感が見えますね。

 

そして夫婦は赤ちゃんの部屋に行きます。

この時のピエールの子供のあやし方がまた微笑ましいです。

ナターシャも幸せそうです。

 

そこへニコライ夫妻がやって来ます。

ピエールとニコライは、話さねばならぬ用事があるのに、ピエールは心ここに在らずでペーチャをあやしています。

そんな姿に伯爵夫人マリヤも「ニコライも優しいお父さんなのですよ」とフォローを入れますが、ニコライは憎まれ口を叩いてピエールと出て行きます。

ニコライは、昔から『女みたいな事』をしている自分の姿を見られるのが嫌なのですね。本当は可愛くて仕方がないのですけれどね。