戦争と平和 第4巻・第3部(5−2)フランス軍大行李への潜入役、チホン・シチェルバートゥイという | 気ままな日常を綴っています。

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(物語)

チホン・シチェルバートゥイは、軍で最も必要な人間の1人でした。

彼はグジャーチ町付近のボクロフスコエ村の百姓でした。

デニーソフ がパルチザン活動を始めて間もない頃、ボクロフスコエ村に行き、例によって村長を呼んで、フランス軍について知っている事は無いか❓と尋ねました。

すると村長は、これはどの村長も同じ事でしたが、関わり合いになる事を恐れるように、何も知らないし、何も聞いていない、と答えました。

 

しかし、デニーソフ が、自分達の目的はフランス兵どもを撃つ事に在るのだ、と説明して、この村にフランス兵どもが迷い込んだ事は無かったか❓と尋ねると、村長は、略奪兵どもは確かに来たが、この村ではチホン・シチェルバートゥイという百姓1人だけがその方の事をやっている、と答えました。

デニーソフ はチホンを呼んで来させて、その活動を褒めた上で、村長を前にして、祖国の息子達が遵守しなければならぬ皇帝と祖国への忠誠とフランス軍に対する憎悪について、少しばかり説き聞かせました。

 

「俺はフランス軍に悪い事をした覚えはねえ。」と、デニーソフ の言葉に怖気付いたらしく、チホンは言いました。

「俺はただ、気晴らしに若い奴らとふざけただけだ。略奪兵どもは確かに20人ばかしぶち殺したが、別に悪い事をした訳じゃねえ。。」

 

翌日デニーソフ が、この百姓の事など綺麗に忘れて村を発とうとすると、チホンが隊に纏わりついて、どうしても使ってくれ、と頼んでいるという報告を受けました。

このような経緯で、デニーソフ は彼を隊に留める事にしたのでした。

 

チホンは、初めのうちは、焚火の支度、水汲み、馬の手入れなどの雑役に付いていましたが、間も無くパルチザン戦に対する大変な熱意と才能を発揮しました。

彼は夜になると獲物を漁りに出掛けて、その都度フランス兵の軍服や銃などを盗んで来ましたし、命じられると、捕虜も捕えて来ました。

デニーソフ は、チホンに雑役をやめさせ、偵察に連れて行くようになり、彼をコサックに加えました。

 

チホンは馬が嫌いで、いつも徒歩でしたが、決して騎兵に遅れる事は有りませんでした。

彼の武器は、面白がって担いでいる撃鉄銃と、槍と、斧で、この斧は彼に彼にすれば、毛の中のシラミを取ることも、太い骨を噛み砕く事も、同じように易しく出来る狼のようなものでした。

チホンは、斧を振って丸太を断ち割る事も、斧の背を持って細かい串を削ったり、匙をこしらえたりする事も、同じように巧みに出来ました。

デニーソフ 隊で、チホンは、類の無い独自の地位を占めていました。

何か特に困難な、嫌な仕事ーーぬかるみにハマった荷馬車を肩で押し上げるとか、尻尾を掴んで湿地から馬を引っ張り出すとか、死んだ馬の皮を剥ぐとか、フランス軍のど真ん中に潜入す流とか、1日に50露里も突っ走るとかーーをしなければならぬとなると、皆、チホンを指差すのでした。

「あの鬼に出来ねえ事があるもんか。何しろ人間並みじゃねえからな。」と、人々は彼の事を言うのでした。

 

チホンが捕らえたフランス兵の1人がピストルを彼に発射し、弾が彼の背中の肉に突き刺さりました。

この傷をチホンは内からも外からもウオッカだけで直しましたが、これが隊で最も愉快な冗談の種になり、チホンもこの冗談でからかわれるのを喜んでいました。

この出来事がチホンに与えた影響と言えば、この負傷後、滅多に捕虜を捕まえに行かなくなった事だけでした。

チホンは、隊の中で最も役に立つ勇敢な男でした。

誰も彼より多く襲撃の機会を見つけた者は居ませんでしたし、彼よりも多くのフランス兵を捕まえたり、殺したりした者は居ませんでした。

その為に、彼は全てのコサック達や騎兵達の人気者で、自分でも好んでその役割にハマっていました。

 

ところで、チホンは、もう昨夜の内に、口を捕まえる為に、シャムシュヴォに派遣されていました。

しかし、フランス兵を1人捕まえただけでは満足出来なかったのか、それとも朝まで寝過ごしてしまったのか、日が高くなってから、藪を伝ってフランス軍のど真ん中に忍び込んだ為に、デニーソフ が丘の上から見たように、フランス兵達に発見されたのでした。

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(解説)

パルチザンのデニーソフ 隊のチホン・シチェルバートゥイという百姓のアウトラインを描く事によって、この人間を通して、当時の危険だったパルチザンの活躍を、面白おかしく描いている部分ですね。

 

デニーソフ がパルチザン活動を始めて間もない頃、ボクロフスコエ村に行った時、村長からチホン・シチェルバートゥイという百姓だけが略奪しに来たフランス軍に対応❓している、と教えられました。

チホンは、きっと何らかの理由があったのでしょうね、どうしてもデニーソフ 隊で使って欲しい。。と懇願します。

 

チホンは、最初のうちは普通の雑役係でしたが、デニーソフ は彼がパルチザン戦にとても興味を持ち、かつ、その方面の才能を発揮しうる人間である事に気付きます。

彼は、夜になるとひょろ〜と出かけて、フランス軍の軍服や銃、そればかりか、命じられると捕虜まで捕まえて来ました。

やがてチホンは、デニーソフ の偵察にお供をするようになり、コサック隊の一員に入れられました。

 

チホンは、おそるべき身体能力を有し、かつ、手先が器用でした。

馬は嫌いで乗りませんでしたが、徒歩で小回りが利くし、騎兵に遅れることさえ有りませんでしたし、それに歩きでどこまでも歩く体力を兼ね備えていました。

彼の道具は斧で、これで細かい仕事を器用にこなすし、力が必要な仕事も難なくこなせる男でした。

また、彼は勇敢な男で、襲撃の好機を捉える事が出来、フランス兵を捕まえたり、殺したり、捕虜にしたりしました。

 

ところで、チホンは、もう昨夜の内に、口を捕まえる為に、シャムシュヴォに派遣されていました。

しかし、どういうわけか、日が高くなってからフランス軍のど真ん中に忍び込んだ為に、デニーソフ が丘の上から見たように、フランス兵達に発見され騒がれていたのでした。。