(物語)
ソーニャはナターシャに劣らず胸を騒がせていました。
『アンドレイ公爵が助かってさえくれたら❗️』と、彼女は胸の中で繰り返していました、ひとしきり泣いて、語り合って、涙を拭うと、2人の親友同士はアンドレイ公爵の部屋の扉口に歩み寄りました。
ナターシャは、そっと扉を開けて、中を覗きました、ソーニャは並んで半開きの扉の側に立っていました。
アンドレイ公爵は、枕を3つ重ねて上体を高くして寝ていました。
蒼白い顔は穏やかで、目は閉じられ、なだらかな息をしているのが見えました。
「あっ、ナターシャ❗️」と、ふいにソーニャはほとんど叫ぶ曜日言うと、従妹の手を掴んで、扉口から後退りしました。
「何❓何❓」と、ナターシャは聞きました。
「これはあれよ、あれよ、ほら。。」と、ソーニャは真っ赤な顔をして、唇をわなわな震わせながら言いました。
ナターシャはそっと扉を閉め、何を言われたのかまだ分からずに、ソーニャと一緒に窓辺へ離れました。
「ねえ、覚えている❓ほら、私が代わりに鏡を覗いた時のこと。。オトラードノエで、クリスマスの時に。。覚えている❓私が何を見たか❓」と、怯えたこわばった顔でソーニャは言いました。
「ええ、覚えてるわ❗️」と、ナターシャは目を丸くして、あの時ソーニャがアンドレイ公爵が寝ている所を見た、とか言った事をぼんやり思い出しながら、言いました。
「覚えているわね❓私があの時見て、貴女にも、ドゥニャーシャにも、皆に言った事、私、あの方がベッドの上に横たわっている所を見たのよ。」と、一区切りごとに指を1本立てて、強調しながら、彼女は言いました。
「目を閉じていらしたし、確かに薔薇色の毛布に包まれて、両手を組み合わせていらしたわ。」と、彼女は今見た細かい点を挙げて行くに連れて、それがことごとくあの時見たものと同じだと言う確信を深めながら言いました。
あの時実は、彼女は何も見えていませんでしたが、彼女には、他のあらゆる思い出と同じように、すっかり現実の事として思い返されました。
彼女はあの時、彼がこちらを見てにっこり笑ったと言いましたし、何か赤いものに包まっていたと言ったのでしたが、しかし彼女は、彼が薔薇色の、確かに薔薇色の毛布に包まれて、目は閉じられていたのを、既にあの時見たし、そう言ったように、単に覚えていたばかりか、固く信じ込んでいました。
「そうそう、確かに薔薇色と言ったわ。」と、ナターシャも薔薇色と言われた事を覚えているような気がして、言いました。
そしてそこに予言の大きな脅威と神秘を見ました。
「でも、それはどう言う意味かしら❓」と、ナターシャは考え込みながら言いました。
「ああ、私分からないわ、あんまり不思議なんですもの❗️」と、ソーニャは頭を押さえながら言いました。
しばらくすると、アンドレイ公爵が鈴を鳴らして呼びました、ナターシャは部屋へ入って行きました。
ソーニャは滅多に覚えた事のない興奮と感動に包まれて、この異常な出来事の不思議さを思い巡らしながら、窓辺に佇んでいました。
その時、軍に手紙を送る便があったので、伯爵夫人は息子に手紙を書いていました。
「ソーニャ」と、姪が側を通り過ぎる時、手紙から目を上げて伯爵夫人は言いました。
「ソーニャ、ニコーレンカに書いてくれませんか❓」と、伯爵夫人は震えを帯びた静かな声で言いました。
そして眼鏡越しに見つめているその疲れた眼差しに、ソーニャは伯爵夫人がこの言葉に込めた全ての意味を読み取りました。
その眼差しには、祈りに似た哀訴も、断られはしないかと言う恐れも、こんな事を頼まなければならぬ恥ずかしさも、断られたら徹底的に増悪してやろう。。と言う決意も、そうした全てが込められていました。
ソーニャは伯爵夫人の前に行くと、ひざまずいて、その手に接吻しました。
「書きますわ、お母様」と、彼女は言いました。
ソーニャは、その日に起こった全ての事、特に今、目の当たりに見た占いの神秘的な実現の為に、心がすっかり和らげられ、興奮と感動に包まれていました。
今は、ナターシャとアンドレイ公爵の関係が復活したら、ニコライが公爵令嬢マリヤと結婚出来ぬ事を彼女は知っていたので、昔の自己犠牲の気持ちが戻ると、彼女は嬉しく思いました。
そして目に涙を溜め、心の広い立派な行為を行うのだと言う喜びを持ち、ニコライをあれほど感動させたあのいじらしい手紙を書いたのでした。。
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(解説)
ソーニャが、アンドレイ公爵が回復しナターシャと結婚する事を、ナターシャへの祝福の為では無く、『自分がニコライと一緒になれる』為に願っています。
そして、その時のアンドレイの姿が、あのオトラードノエのクリスマスの時の鏡の中に見た人で、アンドレイ公爵こそナターシャの運命に人だった。。。という暗示をします。
ナターシャも、ソーニャのまことしやかな発言を真に受けます。(自分の運命に相手はやっぱりアンドレイ公爵なのかな❓的にね、ただし、彼女のアンドレイ公爵に対する気持ちはず〜〜と示されていないし、ナターシャ自身も周囲には言っていない模様ですね。。)
そこへ、ロストフ老伯爵夫人から、ニコライに(約束は無かった事にして欲しいという)手紙を書くように、ソーニャは言われます。
ソーニャは、『どうせ、ニコライはマリヤとは一緒にはなれないのだ』という妙な確信を持って、昔のような従順な気持ちで、心に広い手紙を書き、自分は今、立派な行為をしたのだ。。と思うのですね。。
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(追記)
第2巻・第4部(12−2)ナターシャ、アンドレイ公爵と本当に結ばれるのか不安になる。
※民間の伝来で、クリスマスに未婚の女性が鏡を覗くと、未来の夫の姿が映るとされていた。➡︎この話で、ソーニャはナターシャにお願いされて、ナターシャの代わりに鏡を覗き込み、アンドレイが寝ている姿が見える、とウソ❓を言っています。