戦争と平和 第4巻・第1部(4−2)ニコライ、県知事邸の夜会で調子に乗る。 | 気ままな日常を綴っています。

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(物語)

ニコライはそれから県知事の所へ向かいました、県知事は小粒でしたが、ぴりりとした人間で、愛想が良く気さくでした。

彼は馬を購入できるいくつかの養馬場をニコライに教え、市内の馬の仲介人や、いい馬を持っている、市から20露里程の所の地主の名を挙げて、あらゆる協力を約束しました。

「貴方は、イリヤ・アンドレーエヴィチ伯爵(=ロストフ老伯爵)のご子息かな❓わしの家内が貴方のお母様と大の仲良しでしてな。木曜日毎にうちに集まりがあるのだが、折良く今日がその木曜日だ。そうぞお気軽においで下さい。」と、彼を送り出しながら、県知事は言いました。

 

ニコライは県知事の所を出ると、すぐに駅馬交替の駅馬車をつかまえ、曹長を連れて、20露里先の地主の養馬場へ飛ばしました。

ヴォローネジ市に着いて最初の間は、ニコライにとっては何もかもが楽しく、軽快で、全てがすらすらとうまく進みました。

ニコライが訪ねた地主は、やもめ暮らしの老騎兵で、馬には詳しく、それに狩猟が好きな男でした。

ニコライは2つ返事で、今回の軍馬補充の見本馬として選り抜きの牡(おす)馬17馬を6000ルーブリで購入しました。

昼食をご馳走になり、『きみ、ぼく』の間柄になった地主と別れの接吻を交わし上機嫌で、県知事邸の夜会に遅れない為に、御者を急き立てながら馬車を飛ばしました。

 

服装を改め、香水をたっぷりふりかけ、頭を水で冷やしてから、ニコライは少し遅くなって『遅れても来ぬよりはまし』という先人の言葉に従って、県知事邸を訪問しました。

この日は舞踏会ではありませんでしたが、客達は皆、『どうせカテリーナ・ペトローヴナがクラヴィコルドでワルツとエコセーズを弾き、ダンスになるものと承知していました。

1812年の地方の県郡の生活は、例年と少し違い、モスクワから多くの富裕な家族が疎開して来た為に市中に活気が出た事と、これはその頃のロシアのあらゆる現象に共通していたことでしたが、世の中なんかたかが知れてる、何もびくびくする事は無い、というような一種特別の奔放な気分が見られたことと、それに世間話が今は、モスクワだの、軍隊だの、ナポレオンだのが話題にされている事くらいでした。

 

県知事邸に集まった顔ぶれは、ヴォローネジ市の上流社会の人でした。

しかし男達の中に、ゲオルギイ勲章を持つ軍馬購入係の軽騎兵士官で、しかも気の優しい上品なロストフ伯爵と比肩(ひけん)しうる者は1人も居ませんでした。

軽騎兵の正装をしたニコライが、香水とぶどう酒の匂いを漂わせながら部屋に入って行くと、たちまち皆に取り囲まれ、全ての視線が彼に注がれました。

ニコライは、あの社交界の寵児の位置に自分が立った事を感じました。

貴婦人達や令嬢達は彼に媚態を作ったし、老人達は最初の日から、この生きの良い軽騎兵士官をなんとか馴らして嫁をもたせたいものだ、と気を揉み始めました。

 

カテリーナ・ペトローヴナは期待通りワルツやエコセーズの演奏を始めてダンスになり、ニコライはその鮮やかな踊りぶりで県郡の全社交界を益々魅了してしまいました。

その夜会の間ニコライは、県のある役人の夫人で、青い目元の涼しいふくよかな金髪美人に最も関心を向けていました。

他人の妻は自分達の為に作られたものだという、あのいい気な青年達のナイーヴな確信を持って、ロストフはこの夫人の側を離れず、そしてその夫に対しては、2人は、つまりニコライとこの夫人は、口に出しては言わないが、実に似合いのカップルである事を承知しているのだ、と見せ付けるような、いささか共犯者めいた、いかにも親しげな態度を取っていました。

 

夫はしかし、この確信には同意しかねると見せて、努めて不機嫌な顔をロストフに見せていました。

ところが、ニコライの明るい無邪気さがまるで底抜けだったので、夫は時々思わずニコライの陽気な気分につりこまれてしまいました。

しかし、夜会の終わり近くなると、まるで夫婦の生気の量が決まっていて、それが妻の方に増えれば夫の方はそれだけ減るように、妻の顔がいよいよ赤味を増し、生き生きと華やいで来るに連れて、夫の顔はますます暗くなり、固くこわばって行くのでした。

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(解説)

その後ニコライは、県知事を訪ねます。

県知事は気さくにニコライに馬の調達に良い場所を教えて上げ、ロストフ老伯爵の知り合いだった事もあり、今夜自邸で開かれる夜会にニコライを招待します。

 

ニコライは、無事馬を調達し、そこの地主にも可愛がられています。

そして、夜になると県知事邸に軽騎兵士官の正装をして出かけます。

その夜会に出席している男性の中で、ニコライはゲオルギイ勲章を持つ軍馬購入係の軽騎兵士官で、しかも気の優しい上品な立ち振る舞いでたちまち皆の注目を集めます。

ニコライは、調子に乗って派手にダンスはするわ、金髪美人の人妻と遊びで仲良くして見せて夫をからかったりしています。

そんなニコライに県知事夫人は、ある人物を紹介します。。。