戦争と平和 第3巻・第3部(31−1)ソーニャ、ナターシャにアンドレイ公爵が同行している事を告げ | 気ままな日常を綴っています。

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(物語)

侍僕は戻って、モスクワが燃えている事を伯爵に告げました、伯爵はガウンをまとって外に出て行きました。

ソーニャとマダム・ショッスも、伯爵の後に続きました。

(ペーチャはもう家族と同行していませんでした。彼は、トロイツァへ向かう連隊と共に先に出発していました。

 

モスクワが燃えているという知らせを聞くと、伯爵夫人は泣き出しました。

ナターシャは、真っ青な顔で、聖像の下の腰掛椅子に座った切りで、父の言葉に耳を傾けようともしませんでした。

彼女は3軒向こうの家から聞こえてくる絶え間ない副官のうめき声に耳を澄ませていました。

「ああ恐ろしい事だわ❗️」と、凍えと怯えでがくがく震えながら、窓から戻って来ると、ソーニャは言いました。

「きっとモスクワがすっかり燃えてしまうわ、空が真っ赤ですもの❗️ナターシャ、見てごらん。ここの窓から見えるわよ。」と、彼女は何とかしてナターシャの気を紛らそうと願うらしく、声を掛けました。

しかしナターシャは、何を言われたかわからないらしく、チラとそちらを見ましたが、また暖炉の角にひたと目を据えました。

 

ソーニャが、何故そうしなければならぬと思ったのか自分でもわからずに、アンドレイ公爵が負傷してこの一行の中に居る事を、今朝ナターシャに打ち明けてしまい、伯爵夫人を驚きと怒りに突き落としたその時から、ナターシャは石のように黙り込んでしまいました。

伯爵夫人は(滅多に見せない事でしたが)血相を変えてソーニャを叱りつけました。

ソーニャは泣いて許しを乞い、それからは自分の罪の償いをしようと努めるように、絶えずナターシャの機嫌を取っていました。

「ご覧よ、ナターシャ、恐ろしい勢いで燃えてるわよ。」と、ソーニャは言いました。

「何が燃えているの❓ああ、そうそうモスクワね。。」

そして、せっかくの誘いを断って、ソーニャに嫌な思いをさせない為と、ソーニャから解放されたい為に、彼女は申し訳に頭を窓の方へ動かして、明らかに何も見えるはずが無い位置からちょっと外を見ただけで、また元の位置に座り直しました。

「あら、それじゃ見えなかったでしょう❓」

「ううん、見えたわよ、本当よ。」と、構わないでくれ、と祈るような声で彼女は言いました。

 

アンドレイ公爵が重傷を負って、一行の中に居ると今朝聞かされると、ナターシャは最初のうちだけ、何処へ行くのか❓、重態なのか❓、会う事ができるか❓などとうるさく尋ねましたが、面会は許されない、重傷だが生命に危険は無い、と知らされると、それからは、いくら聞いてもどうせ同じ返事しか得られないと悟ったらしく、何も聞かなくなってしまいました。

そして移動の間ずっと、大きな目を見張って、馬車の隅にじっと身じろぎもせずに座っていました、そして今も腰掛けに座った切り、そのままの姿勢で座り続けていたのでした。

彼女が何事かを思案し、何かを決めようとしていた、いや、もう既に心の中に決めていた事を、伯爵夫人は知っていました。

しかし、それが何かは、伯爵夫人には分かりませんでした。

そしてそれが彼女を恐れさせ、苦しめていたのでした。

 

「ナターシャ、服を脱いで私の夜具に寝るといいわ、そうしなさいね。」(伯爵夫人にだけ寝台の用意がされてマダム・ショッスと2人の令嬢は床の乾草の上に寝る事になっていました。)

「いいのよ、ママ。私、この床の上に寝るから。」と、怒ったように言うと、ナターシャは窓の側へ行って窓を開けました。

副官のうめき声が開けられた窓から一層はっきりと聞こえて来ました。

彼女は夜の湿っぽい空気の中へ頭を突き出しました、そしてその細い首が嗚咽の為に震え、窓枠を震わせているのを、伯爵夫人は見ました。

 

うめき声を立てているのがアンドレイ公爵でない事は、ナターシャにはわかっていました。

彼女はアンドレイ公爵が、この家の続きの、入口の土間を隔てた別棟に寝かされている事を、知っていました。

しかし、この絶え間ない恐ろしいうめき声は、彼女の心を引き裂きました。

伯爵夫人はソーニャと目を見交わしました。

「休みなさい、ね、いい娘だから、横におなり。」と、ナターシャの肩に手を触れながら、伯爵夫人は言いました。

寝支度が終わると、ナターシャは乾草の上にのべられた一番扉側のシーツの上に、そっと横になりました。

 

伯爵夫人と、マダム・ショッスと、ソーニャは急いで服を脱いて横になりました。

室内には燈明が1本だけ灯されたままに残されました。

しかし子飼いは、2露里先の小ムイチーシチ村の火事の為に明るく、マモーノフ部隊のコサック達が破壊した居酒屋や、草場の刈り跡や、道端で騒いでいる民衆の喚き散らす声が夜空に淀み、相変わらず絶え間ない副官のうめき声が聞こえていました。

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(解説)

ここでは、どういう訳か知りませんが、ソーニャは、伯爵夫人の許可も得ずに、ナターシャにアンドレイ公爵が自分達の一行に居る事を告げてしまいます。

ソーニャの真意については、後ほど明らかにされるようです。

伯爵夫人は、ナターシャがアンドレイ公爵と同行している事を知ったという事にとても心配をします。

その心情は明らかにされていませんが、彼女の性格上、『ただでは済まされない』と思ったからでしょう。。

 

ナターシャは、アンドレイ公爵の存在を知り、彼の様子を非常に気にしますが、周囲から『面会謝絶だから』とのみ言われるので、もう、何も聞く気もないようです。

しかし、彼女は、アンドレイ公爵と結婚の『口約束』だけして、アンドレイ公爵が外国へ1年もの旅に出たっきり会っていないのですね。

あのですねー。彼女はこの間、アナトーリ の誘惑には負けてしまっているのですよね。

それで、彼女は自分がなぜアナトーリ を愛してしまったと思ったのか、自分でもうまく説明し得ない気持ちなのだと思います。

だから、彼女はどうしても、もう一度アンドレイ公爵に会って『アンドレイ公爵との愛は何だったのか❓』を確認したいのではないか❓と思うのですよ。

 

現実にでもですね、自然消滅したと思われているカップルであってもですね、それが何か深い因縁に基づいているのであれば、やはり再会して『あれは何だったのか❓』とあの時を振り返る機会はね、天から必然的に授けられると思うのですよ。

実際、それが10年後であったとしても、偶然再会して『ああ。。あの時の自分は、ちょっと異常な心理状態だったのだな。。』と思ったりね、『やはり、この人は自分にとってかけがえのない人だった』とかね、色々考え学ぶ機会って不思議と訪れるように思います。