戦争と平和 第3巻・第3部(9−2)ピエール自分の内面を見つめる意義、自分の全ての思考を結びつけ | 気ままな日常を綴っています。

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(物語)

ピエールは、恩人が何を言っているのか聞き取れませんでしたが、しかし彼には、恩人が、善と『彼ら』のような人間になれるのだということについて語っている事は、わかっていました。(夢の中では、思想のカテゴリーもはっきりしていました。)

そして『彼ら』は、その影の無い、優しい、しっかりした顔を並べて、恩人の周りをびっしりと取り巻いていました。

しかし、『彼ら』は優しい人達でありましたが、ピエールの方を見ていませんでしたし、ピエールを知らない人達でした。

ピエールは、『彼ら』の注意をこちらに向けさせて、何かを話しかけたくなりました。

彼は腰を上げかけました、ところがその途端に足に寒さを覚えました。。足がむき出しになっていたのでした。

 

実際、街灯がずり落ちていました。

ピエールは、街灯を直しながら、目を開けました、すると、同じ庇や柱が青みを帯びて、夜露か霧に覆われて、キラキラ光っていました。

『夜が明けるんだな』と、ピエールはふと思いました。

『だが、そんな事は問題じゃ無い。恩人の言葉を最後まで聞いて、理解する事だ』彼は、また外套を被りました。

だが、結社の会食も、恩人の姿も、もう有りませんでしたあ。

ただはっきりと言葉に表現された思想だけが残っていました。

それは誰かが語ったものなのか、さもなければピエールが自分で繰り返して考えていた思想でありました。

 

ピエールは、後でこの思想を思い出しながら、それがあの日の印象によって呼び起こされたものであったにも拘らず、彼の外の何者かがそれを彼に語ったのだと確信しました。

夢の中でも無い限り、絶対にこんな風に考えたり、自分の考えを表現したりできる訳がない、と彼には思われたのでした。

 

『戦争は、神の法則への人間の自由の最も難しい服従だ。』と、声が言いました。

『素直とは、神に従順な事だ。語られた言葉は銀だが、語られぬ言葉はーー金だ。死を恐れている間は、人間は何も所有する事が出来ぬ。死を恐れなければ、全てがその者のものとなる。もし、苦しみが無かったら、人間は自分の限界を知らなかったろうし、自分という者を知らなかったろう。最も難しいのは、自分の心の中であらゆるものの意味を統一する事が出来るようになる事だ。全てを統一するのか❓』と、ピエールは夢の中で考え続けました。(というか、声を聞き続けました。。)

『いや、統一するのでは無い、思想を統一する訳にはいかない。全ての思想を結びつけるのだーーこれが必要なのだ❗️』

ピエールは、この言葉によってのみ、彼が表現しようと望んでいたものが表現され、彼を苦しめていた問題がすっかり解決される事を感じながら、心を喜びで一杯にして、こう繰り返しました。

 

「そうだ、結びつけるのだ、もう結びつける時だ。」

「もう、馬を付ける時間ですよ、旦那様」と誰かの声が繰り返しました。

それはピエールを起こす調馬師の声でした。

太陽の光線がまともにピエールの顔に当たっていました。

ピエールは泥んこの宿舎の庭を見てやりました。

庭の真ん中にある井戸のそばで、兵士達が痩せた馬どもに水を飲ませていました。

荷馬車の列が門から出て行く所でした。

ピエールは、気色悪そうに顔を背けると、目をつぶり、急いでまた馬車の座席にごろりと横になりました。

 

『違う、こんなものじゃない、こんなものは見たくも理解したくも無い。俺が理解したいのは、夢の中で啓示を受けた事だ。もう1秒あったら、すっかりわかったのになあ。。さて、俺は今から何をしたらいいのだ❓結びつける事だ、だが、どうして全てを結び付けるのか❓』

すると、ピエールは夢の中で見たり聞いたりしたもの全ての意義が崩れ去ったのを感じて背筋が冷たくなるのでした。

 

調馬師と御者と庭番が、(1人の士官が馬を飛ばして来て)フランス軍がモジャイスクに前進中で、わが軍は後退を開始している、と知らせに来た、とピエールに言いました。

ピエールは飛び起きました、そして馬車の支度をして、自分に追いつくように言いつけて、歩いて町の中を抜けて行きました。

 

諸部隊は約1万の負傷者を残して、街を出て行きました。

負傷者達の姿は、家々の庭にも見えたし、通りにも固まり合っていました。

ピエールは、追いついた自分の馬車に、知り合いの負傷した将軍を乗せて、一緒にモスクワに向かいました。

途中でピエールは、妻の兄のアナトーリ とアンドレイ公爵の死を知ったのでした。。

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(解説)長いです💦

かなり難しいピエールのモノローグの部分です。

力量が足りていませんが、自分なりに解釈して見たいと思います。

 

ピエールは、恩人が何を言っているのか聞き取れませんでしたが、しかし彼には、恩人が、(ピエールが)善と『彼ら』のような人間になれるのだということについて語っている事は、わかっていました。

じゃあ、どうやったらなれるのか❓。。ピエールは恩人の言葉を何とかして聞き取ろうとします。

 

①『戦争は、神の法則への人間の自由の最も難しい服従だ。』と、恩人はまず語ります。

ここで『神の法則』には何もプラスばかりではなくマイナスもあります。戦争はそのマイナス部分の最たるものだと述べていると考えます。

『素直とは、神に従順な事だ。語られた言葉は銀だが、語られぬ言葉はーー金だ。』

素直とは、神の導きに従順に従う事だという事だと思います。

神の導きと認識していなくとも、神はその人の脳に指令を送っていると思います。

意識的な場合はもちろん、無意識的にその指令に従う事も『素直』に含まれると思います。

そして、真理を語る(人の)言葉は『銀』だか、自分の頭の中で考えたり、気がついたり、心で思ったーーすなわち、自分の立場で自分なりに咀嚼した真理こそ『金』だと言っているように思います。

 

②最も難しいのが、『死を恐れている間は、人間は何も所有する事が出来ぬ。死を恐れなければ、全てがその者のものとなる。』という下りですね。

ピエールは上層部の、戦争で自分の手柄を上げて昇進を狙う人間ではなく、一般の兵士達がロシアの為に命を落とす事を恐れずに突き進む姿に感動しているのですね。

確かに、彼らのバックボーンにあるものも『愛国心』なのですが、『愛国心』を振りかざして敵を攻撃して殺す事を煽り、その功績を自分のものにしようとするベニグセン伯爵とかラストプチン伯爵のソレとは『別物』なのですね、彼らの『愛国心』は。

 

私は『死を恐れるな』=『現世に執着をするな』という風に解釈しているのですけれどね。

『現世』とは、建前で動いている社会の事ですね。。

そこには自分が良い人生を送るために上に登ろうと頑張る人、団体でつるむのが安全だと思う人、権力に巻かれるのが安全だと思う人。。。そんな世俗的な世界です。

ま、トルストイ流に言えば、いわゆる『ロシアの社交界』ですね、エレンはその象徴だと思います。

ピエールは、もちろんロシアの社交界の重鎮に当たります。

彼は、みんなにその財力を認められて、丁重に扱われますが、なぜか満たされない。。。。なぜ❓

なのに、あの兵士達はなんと生き生きと、しかも騒がず、自分の命を捧げることに平気(❓)なのか❓

自分には無い彼らにあるものは何なのだ、果たして自分には『彼らと同じものがあるのか❓』という疑問だと思います。

 

これね、ピエールが戦争を見に行く❗️と決めた時、お金に埋もれてこんな放蕩生活を続けるよりも、何もかも投げ捨てて乞食になってしまった方がうんと救われる気持ちがする。。と言った部分につながると思うのですけれどね。

ピエールの葛藤は、実は現代日本社会にも存在している問題だと思います。

必ずしもトップレベルが成功者として重宝されているわけでも無い社会、コネ・おだて・お金。。そんな物でトップに上り詰めて『自分は成功者』と思っている無知な人間。。。そんなのゴロゴロしていると思うのですよね。

そんな社会の中で生きてゆく事は、『本当の自分をどこか押し殺して』生きているようなものだと思うのですけれどね。

ピエールは、まさにこのような認識を持っているのではないかな❓と思うのです。

 

だから、恩師は『このような建前で出来ている現世への執着』を捨てなさい、そうしたら、自分の内面の思考はうんと自由になる。。というような事を諭しているのだと思います。

ピエールも、その境地に達すれば、『彼ら』と同じになるのだ、という指摘だと思います。

そして、ピエールはもう、既にその境地に差し掛かっているのですね。。実際に。

 

しかし、ピエールはこの戦争で起きた事と自分の思う真理とどうしても結びつける事がまだ出来ません。。

しかし、『問題点』を見つけた点では、この戦争を見て彼なりに咀嚼を始めているのだろうな。。と思います。