戦争と平和 第2巻・第4部(1−2)帰郷したニコライ、ナターシャとアンドレイとの将来に不安を抱く | 気ままな日常を綴っています。

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いつか静かに消える時まで。。
一人静かに思いのままに生きたい。。

(物語)

行程の半ばまで、ロストフの思いは全てまだ後にしてきた騎兵隊中隊に残っていました、ところが、行程の半分を過ぎると、オトラードノエでは何がどんな風になっているだろうかと、そろそろ気になり出しました。

故郷に近づくに連れて、彼はひたすら家の事ばかり考えていました。

彼はオトラードノエの一つ手前の宿駅で御者に酒代を3ルーブリはずみ、そして、まるで子供のように息を弾ませながら、家の表玄関へ駆け込みました。

 

再会の感激と、期待したものに比べて何となく物足りぬあの奇妙な思いが過ぎるとーーみんな元のままじゃないか、一体何の為にこんなに急いで来たのだ❗️ーーニコライは次第に家の中の自分の古い世界に落ち着き始めました。

父と母は少し太っただけで元のままでした、少し変わった所と言えば、何処と無く不安気な様子と、時々言い合いをする事でしたが、こんな事は前には見られなかった事で、経済状態が思わしく無い所から来る事が、ニコライには間も無くわかりました。

 

ソーニャはもう19歳を過ぎていました。

彼女はもう美への成長が止まって、今持っているものより多くは望めませんでしたが、それだけでも十分でした。

彼女はニコライが戻った途端から、全身で愛と幸福に息づいていました、そしてこの娘の貞節な変わらぬ愛が、ニコライの心を喜びで温めてくれました。

誰よりもニコライを驚かせたのはペーチャとナターシャでした。

ペーチャはもう13歳の大柄な美しい少年で、元気で利口ないたずら者で、もう声変わりがしかけていました。

ニコライは、ナターシャにはすっかりびっくりしてしまい、なかなか驚きから覚める事が出来ませんでした。

 

「すっかり変わったよ。」と、彼は言いました。

「あら、醜くなった❓」

「その逆よ、しかしぐっと気品が出た。まさに公爵夫人だよ❗️」と、彼は声を落としてナターシャに囁きました。

「そうよ、だって、そうなんだもの。」と、ナターシャは嬉しそうに言いました。

ナターシャは、アンドレイ公爵とのロマンスや、彼がオトラードノエを訪問した時の事などを語り、彼から来た最も新しい手紙をニコライに見せました。

「どう、兄さん、喜んで下さる❓」と、ナターシャは聞きました。

「私、すっかりしとやかになったでしょ、幸福が一杯なのよ。」

「本当に嬉しいよ。彼は立派な男だ。どう、彼にすっかり夢中なのかい❓」

「あたし、ボリスにも、ダンスの先生にも、デニーソフさんにも熱中したでしょ。でも、今度のは全然違うのよ。気持ちがちっともふわふわしないで、ぐっと落ち着いているの。あの人より良い人居ないって、わかっているから、気持ちが安らかで、とっても幸せなの。」

 

ニコライは、結婚が1年延ばされた事の不満を、ナターシャに述べました。

ところがナターシャは兄の言葉を跳ね返し、こうする他の無い事や、彼の父の意に背いて家庭に入る事は良く無い事や、自分の方からそれを望んだ事などを、兄に説明し始めました。

妹を眺めながら、兄は時々不思議な気がするのでした。

婚約者と遠く別れている恋する娘らしい所は、彼女には全く有りませんでした。

彼女は穏やかで、安らかで、これまでと少しも変わらず快活でした。

これがニコライを驚かせ、ボルコンスキーとの婚約に疑いの目を向けさせるまでになりました。

 

彼には、妹の運命が既に決せられたとは、信じられませんでした。

まして彼女が、アンドレイ公爵と一緒に居る所を見ていませんでしたので、それは無理からぬ事でした。

彼は、この予想される結婚には何か普通でないものが有るような気がしてなりませんでした。

『なぜ日延べされたのか❓なぜ正式な婚約が行われなかったのか❓』と、彼は考えました。

有る時、母と、妹の問題をじっくり話し合ってみて、彼は母もやはり心の底で時々この問題に疑いの目を向けている事を知り、驚くと同時に何かホッとしたような気持ちを覚えました。

 

「この手紙をご覧」と、母はアンドレイ公爵の手紙をニコライに見せながら言いました。

「12月前には戻らないと、書いているでしょ。あの人を引き留めているどんな理由が考えられるかしら❓きっと病気ですよ❗️身体がひどく弱いようだから。。こんな事、ナターシャには言わないでね。あの子は陽気そうに見えるけれど、あれはそうじゃ無いんだよ、あれはね、娘時代の最後の夕焼けみたいなもので、私はわかっているんだけど。あの方の手紙が来ると、あの娘はいつもあんな風になるんだよ。でもね、本当に、何もかも上手く行ってくれればいいけど。あの方は立派なお人だから。」と、彼女はいつも結ぶのでした。。

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(解説)

ニコライは帰郷して我が家の様相の変化を眺めています。

従来見られなかった両親の言い合いから、ロストフ家の経済状態が深刻で有る事を察します。

 

そしてソーニャの変わらぬ愛に癒され、ペーチャの成長ぶりを喜びます。

ニコライを最も驚かせたのはすっかり美しくなり、しとやかになった妹のナターシャでした。

しかし、ニコライは結婚が1年先送りされた事や正式な婚約がボルコンスキー家から齎されなかった事に不安と疑問を抱きます。

ましてや、ナターシャは自分の気持ちよりも先方の気持ちを思いやるばかりです。

おそらくね、ニコライは、結婚の1年延期についてナターシャに不満を言った時、ナターシャの反応から、「ナターシャは無理しているな。。普通の結婚だったら、感情的な面は対等では無いのか❓これは、先方のナターシャの気持ちへの配慮が足りない、こんな事では結婚しても先が思いやられる。。」と思ったという事だと思います。

そしてニコライは、母の話から、母も自分と同じようにこの婚約に疑問を持っている事を知ります。

家族は誰よりも愛する末娘の幸福を切に願ってはいるのですが、こればかりは相手が居る事ですし、ましてや相手は病気が深刻らしい。。という不安も抱いているのですね。