戦争と平和 第2巻・第1部(10−2)ドーロホフ、ロストフ家でソーニャを見染める。 | 気ままな日常を綴っています。

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(物語)

秋になると、ロストフ家の家族達がモスクワに戻って来ました。

冬の初めにデニーソフも戻って来て、ロストフ家に滞在しました。

この1806年の初冬、ニコライはこの父の邸宅に大勢の青年達を集めました。

ヴェーラは20歳の美しい令嬢で、ソーニャは16歳の娘で咲きたての花の匂うような魅力に包まれており、ナターシャは半ば娘になりかけた少女で、子供のような茶目ぶりを発揮するかと思うと、娘らしい魅力を漂わせたりしていました。

 

このような若い娘達の居る家にはありがちの事でしたが、ロストフ家はこの頃一種独特の恋愛の雰囲気が生まれていました。

ロストフ家に出入りする青年達は皆、若い娘の取り留めもない、どんな事にも飛び付く、希望に満ちた華やいだおしゃべりや、歌とか、音楽とか、甘い音を聞いたりすると、幸福を待ち望む感情を覚えるのでした。

ロストフが家に連れて来た青年達の中で、最も人気の一人はーードーロホフでした。

彼は、ナターシャを除いて、家中の人々に好かれていました。

ドーロホフの事で、ナターシャは危うく兄と口論しそうになったのでした、と言うのは、ナターシャは、今回の決闘ではピエールが正しく、ドーロホフが間違っており、彼は不愉快でわざとらしい所がある、と言い張ったからでした。

 

「何を理解しろ、と言うのよ❗️」と、ナターシャは我を張って叫びました。

「彼は情の無い悪い男よ。私なら、あのデニーソフさんの方が好きだわ。そりゃ酒飲みだし、色々良くない所は有るけれど。つまり、あの方なら理解出来るのよ。ドーロホフさんは全てが計算ずくなのよ。あたし、そんなの嫌いだわ、デニーソフさんは。。」

「何、デニーソフは別さ」と、ドーロホフに比べたらデニーソフでさえ物の数では無い事を、言外に匂わせながら、ニコライは答えました。

「ドーロホフがどんなに美し心を持っているか、理解せにゃいかんよ。彼がお母さんと一緒に居る所を見りゃわかるよ。」

「それは、あたし知らないけれど。。でも彼と居ると気詰まりだわ。兄さん、知っているかしら、彼はソーニャに夢中なのよ。」

「なんてばかな事を。。」

「絶対にそうよ、今にわかるわ。」

 

ナターシャの予言は的中しました。

婦人達の集まりを好まなかったはずのドーロホフが、しげしげとロストフ家を訪れるようになり、その理由が、彼の意中の人がソーニャだと言う『鍵』で解けたのでした。

ソーニャもそれに気づいていて、ドーロホフの姿が見えると、いつも紅絹のように真っ赤になるのでした。

彼はもっぱらソーニャに関心を示し、切なそうな目でじっとソーニャを見つめているので、ソーニャがその視線に耐えられずに顔を赤らめるばかりか、老伯爵夫人とナターシャまでがその目つきに気づいて、顔を赤らめる程でした。

 

ロストフは、ドーロホフとソーニャの間に、何か新しいものが生まれた事に気づいていました。

しかし彼は、その新しい関係が何なのか、突き止める事はしませんでした。

しかし、ソーニャとドーロホフに対して、今までのように軽い気持ちで居られなくなって、彼は家に居る事が次第に稀になって行ったのでした。

 

1806年の秋頃から、またナポレオンとの戦争の噂が、昨年よりも一層熱を込めてささやかれるようになりました。

1,000人に10人の割合の新兵に加えて、さらに9人の割の民兵までが徴収される事が決まりました。

ロストフ家の家族達にとっては、これらの戦争への備えの全関心が、ニコールシカがモスクワに留まる事を承知しないで、デニーソフの休暇が終わるのを待ち、クリスマス週が明けたら一緒に隊へ帰る予定にしている、と言う事だけに集中されていました。

差し迫った出発も、ロストフの遊び心を妨げる事は無く、彼は家に居着かないで、ほとんどの時間を午餐会や、夜会や、舞踏会などで過ごすのでした。

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(解説)

アウステルリッツの会戦終了後、ロストフ家に集まったニコライの友人達は、ロストフ家の若い女性達と和やかに過ごします。

若い男性と女性が集った場合、やはり恋愛の雰囲気が生まれるのは当然の成り行きですね。

その中でもドーロホフは、やはり一番の人気のようです。

 

しかし、ナターシャは、ピエールとドーロホフとの決闘の件で、ピエールが悪いはずはない、と思っています。

ナターシャは、ピエールを良く知っていますから、ピエールの人柄から見て、世間の噂のようにピエールが卑怯で、嫉妬に狂ってドーロホフに決闘を挑み、怪我をさせた、とはどうしても考えられないのですね。

ここは、さりげない指摘ですが、彼女の心の中のピエールの立ち位置(友人としてですね。)が悪く無い事を物語っています。

 

また、ドーロホフは、女性を内面で観察しようとする人物です。

これは前回、ドーロホフ自身がニコライに語っています。

したがって、ソーニャの慎ましさ・優しさ・誠実さを直ぐに見抜き、美しい16歳の彼女をつい目で追ってしまうのですね。

ドーロホフは、おそらく貴族の出身だと思いますが、身寄りの無いソーニャに恋をする、と言う点を見ても、やはり「心が美しい」と言う事は納得ですね。

なぜなら、当時の貴族の結婚というものは形式面・経済的側面も重要視されたのですから、何も無い孤児のソーニャに夢中になるのは、彼の純粋な心、また、その心に正直に従う、己の出世なんかは実力次第と思っている事が伺われます。

ある意味、難しい生き方を愛する女性の為なら選択するような男性ですね。

 

そんなドーロホフのソーニャに対する気持ちを知って、ニコライは複雑な気持ちになります。。。