第2巻・第1部(3−2)バグラチオン公爵の歓迎会とロストフ老伯爵の様子。 | 気ままな日常を綴っています。

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(物語)

ロストフ老伯爵は、人垣をかき分けて出て行きましたが、1分程すると幹事の一人と共に大きな銀の盆を捧げて現れま、それを恭しくバグラチオン公爵の前に持って行きました。

盆には、英雄の名誉を讃える詩を印刷した紙が乗っていました。

バグラチオンは盆を見ると、びっくりして、助けを求めるように辺りを見回しました。

誰の目にも、素直に受けるべしとの要求がありました。

自分が、彼ら一同の支配下に置かれている事を感じて、バグラチオンは腹を決めて両手で盆を受け、それを運んで来た老伯爵を腹立たしげに非難の目で見ました。

 

誰かが親切に、バグラチオンの手から盆を引き取って(でなければ、彼はそのまま夕方まで捧げていた)、彼の注意を詩に向けさせました。

『では、読むよ』と、バグラチオンは観念して腹の中でこうつぶやきました。

彼は、生気のない目で緊張して読み始めましたが、途中で作者の詩人が引き取って、代わりに朗読し出しました。

バグラチオン公爵は、頭を垂れていました。

 

しかし、未だ詩の朗読が終わらぬうちに、声の大きな給仕長が「食事の用意が出来ました❗️」と告げました。

ロストフ老伯爵は、詩の朗読を続けている作者を腹立たしげに睨みつけて、バグラチオンに丁寧に一礼しました。

一同は、食事の方が詩よりも大切な事を感じながら、腰を上げました、そしてバグラチオンが先頭に立って食堂に入って行きました。

皇帝と同名という事で、それなりに意味のあるアレクサンドルの間の主賓の座に、バグラチオンは座らせられました。

300人の人々が、官位や地位に応じて主賓を中心にして高い順位に着席しました。

 

午餐会の直前に、ロストフ老伯爵は息子をバグラチオン公爵に引き合わせました。

公爵は、彼の顔を覚えていて、2言3言取り留めのない不細工な事を言いました。

ロストフ老伯爵は、バグラチオンが息子と話している時、嬉しそうに得意の鼻をうごめかしながら一同を見回しました。

 

ニコライ・ロストフは、デニーソフやドーロホフと並んで、食卓のほとんど中ほどに席を占めていました。

その向かいにピエールとネスウィツキイ公爵が座っていました。

ロストフ老伯爵は、他の幹部達と一緒にバグラチオン公爵の前に座って、モスクワの喜びを代表しながら、しきりに公爵を持てなしていました。

 

ロストフ老伯爵の苦労は無駄ではありませんでした。

料理は全てが見事でしたし、給仕達が威勢良くシャンパンの栓を抜いて注ぎ回り始めました。

「乾杯の祝辞がたくさん出るだろうから、もうそろそろ始めますかな❗️」と囁いて、彼はグラスを持つと、立ち上がりました。

一同は、静かになって彼の言葉を待ちました。

『皇帝陛下のご健勝を祝して❗️』と、彼は大声を張り上げました、するとたちまち善良そうなその目が喜悦と感激の涙に潤みました。

それを合図に、全員が立ち上がって『ウラー❗️』と叫びました。

バグラチオンも、シェングラーベンの野で叫んだと同じ声で『ウラー❗️』と叫びました。

若いロストフのコアんげきした声が300人の声を圧して聞こえました。

彼はほとんど泣かんばかりでした。

 

今度は、音楽の代わりにカンタータを高唱する歌手達の歌声が響き渡りました。

カンタータを終えると、次々と乾杯の辞が続き、その度にますますロストフ老伯爵は感動で胸が一杯になって行き、ますますグラスが割られ、いよいよ歓声が大きくなって行くのでした。

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(解説)

盛大な宴会の様子が描かれています。

が、ちょっと有難迷惑そうなバグラチオン公爵の挙動や、ロストフ伯爵父子のちょっと滑稽な感じの高揚感が感じられ、微妙なギャップが描かれています。

バグラチオンにとってはこそばゆい意味も余り無い詩が、おそらく著名な詩人によって書かれ朗読され、食事も何処の何某のお邸でも出されないような高級な物ばかりでシャンパンはふんだんに飲み干され、乾杯で放り出されたグラスは次々割られています。

これ、恐らく、ほとんどロストフ伯爵家から出た物でしょうね。

ロストフ老伯爵は、お人好しなのは分かりますが、ちょっと作者が「過ぎたるは及ばざるが如し」と言っているような皮肉感が感じられる部分です。