第1巻・第3部(11−2) ドルゴルーコフの楽観論、クトゥーゾフの慎重論。 | 気ままな日常を綴っています。

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(物語)

「そういえば、貴方は会って来たんですね。それでどうでしたか、ボナパルトは❓どんな印象を受けました❓」と、アンドレイ公爵は尋ねました。

「そう、会ったよ。そして彼は今、大会戦をこの世の何よりも恐れている事を確信したね。」と、ドルゴルーコフは、ナポレオンとの会見から彼が抽出した総括的結論を尊重するように、こう繰り返しました。

「もし、彼が決戦を恐れていなかったら、何の為にこの会見を求めて話し合いをしようとしたり、それよりも、彼の戦法に全く反する退却などという恥を、あえて晒したりする必要があるのかね❓私の目に狂いは無いよ。彼は大会戦を恐れている。彼の命運が尽きる時が来たのさ。」

 

「でも、聞かせてくれませんか❓彼はどんな風でした、どんな事を言いました❓」と、アンドレイ公爵はまた尋ねました。

「何。。凡庸な男ですよ。私に『陛下』と呼ばせたくてたまらなかったらしいが、私がいかなる敬称も付けないので、えらくしょげていましたよ。」と、ニヤニヤ笑ってビリービンを見ながらドルゴルーコフは答えました。

「クトゥーゾフご老体には敬意を惜しむものでは決してありませんが。。」と、彼は語り続けました。

「彼(=ボナパルト)が今や確実に我々の手中に居るというのに、グズグズ待っていると、彼に逃げられたり我々を欺く機会を与えるようなもので、それこそいい物笑いですよ。いや、スヴォーロフとその鉄則、己を攻撃される立場に置かず、自ら攻撃せよ、を忘れてはいけませんな。戦争では往々にして若い者のエネルギーが、年寄りの日和見主義者達の経験よりも、正しく道を示す事が有るものですよ。」

 

「でも、どういう作戦計画で彼を攻撃するのです❓私は今日、前哨線へ行ってみましたが、彼の主力部隊が何処に陣しているのか、さっぱりわかりませんが。。」と、アンドレイ公爵は言いました。

彼は、自分が作成した攻撃計画を、ドルゴルーコフに語りたい、と思っていたのでした。

ドルゴルーコフは、立ち上がってテーブルの上に地図を広げました。

「あらゆる場合が予想されているので問題有りませんよ。もし彼がブリュンに居るとしたら。。」と、ドルゴルーコフは早口でワイローテルの両翼移動の計画を語りました。

 

アンドレイ公爵は、それに反論して、自分の計画の適切な事を論証し始めました。

アンドレイ公爵は、ワイローテルの計画がすでに上層部に承認されたものであるので、もちろん軍はその計画にのっとって進攻するので有るが、自案の利点の論証をドルゴルーコフに話して聞かせました。

ドルゴルーコフは論外とばかりに「それなら、今夜クトゥーゾフの所で作戦会議が有るはずだから、そこでそれを発言したら良いでしょう。。」と言いました。

「そうするつもりです。」と、アンドレイ公爵は地図の前を離れながら言いました。

 

「それはそうと、もうそろそろミハイル・イラリオーノヴィチ(=クトゥーゾフ)が退出する頃だ。」と、アンドレイ公爵は言いました。

「君達の幸福と成功を祈る」彼は、こう良い加えると、ドルゴルーコフとビリービンと握手を交わして部屋を出ました。

帰りの馬車の中で、アンドレイ公爵は自制しきれなくなって、傍らにむっつりと座っているクトゥーゾフに、明日の会戦をどう思っているのか❓と尋ねました。

クトゥーゾフは、しばしの沈黙の後、ぶ然として答えました。

「負けると思う。わしはトルストイ伯爵にこれを陛下に進言してくれるよう頼んだ。ところが、伯爵は何と答えたと思う❓<おや、将軍、私はパンやカツレツの支度が仕事ですよ。戦争の方は貴方の領分ですからな。>ふん。。これがわしへの返答だったよ❗️」

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(解説)

解説は前回と内容がかぶりますので特にありません。

アウステルリッツの会戦のロシア・オーストリア軍の幹部で有るドルゴルーコフ公爵のナポレオンの言動に対する楽観的な見方に、アンドレイ公爵がやや疑問を持っている感じなのが見受けられるな。。と思います。

 

そしてクトゥーゾフ将軍の方は、「負けると思う」と断言していますね。

さて。。戦争の行方はどうなるのでしょうか。。