第1巻・第1部(22−1) ボルコンスキー老公爵とその令嬢・マリヤの描写。 | 気ままな日常を綴っています。

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(物語)

ボルコンスキー老公爵の禿山の領地では、アンドレイ若伯爵夫妻の到着が待たれていました。

しかし、この期待も、老公爵の屋敷の整然とした秩序を乱すことは無かったのでした。

老公爵は、バーヴェル帝の時代に田舎に配流されて以来、その領地の禿山に篭ったきりで、娘マリヤとその相談役のマドモアゼル・ブリエンヌを相手に世捨人の暮らしを続けて来ました。

 

老公爵は、常々以下のように考えていました。

人間の悪の根源は、怠惰と迷信であり、美徳は「活動」と「知力」というのが彼の持論でした。

彼は、自分で娘マリヤの教育に当たり、娘の中にこの2つの美徳を育てる為に代数と幾何を教え、彼女の日課表を作成しているのでした。

彼自身も少しもぼんやりしている事は無く、回想記の執筆とか、高等数学の問題の計算とか、庭仕事とか建築の監督とか、絶えず何かの仕事に追われていました。

また、秩序も彼の生活態度の中で最高度の正確さにまで高められており、食堂に現れるのもいつも同じ時間で方式も厳格に決められていました。

 

公爵の領地のある県の知事・高級官吏、庭師、あるいはマリヤ令嬢に至るまで、公爵の指示を仰ぐには天井の高い給仕部屋で定められた時間に公爵が現れるのを待つ事になっていました。

若公爵夫妻到着の朝も、令嬢マリヤはこの給仕部屋に定刻に朝の挨拶の為に入って行きました。

毎日彼女はこの部屋へ来て、朝の挨拶が無事に済みますように。。と祈るのでした。

 

老公爵は娘を呼びました。

彼は厳しいけれども、それでいて優しい気遣いのこもった目で娘を見ると、こう言いました。「元気かな❓じゃあ、座りなさい。」

彼は、自分で書いた幾何のノートを手に取ると「明日の宿題だ❗️」と、手早くページを探し出して爪で印をつけながら言いました。

マリヤは、テーブルの上のノートを覗き込みました。

「そうだ、お前に手紙が来ていた。」と、急に思い出したように言うと、テーブルの上に一通の封書を投げやりました。

「ジュリィからですね。」と、マリヤは父を見て臆病そうに言いました。

「あと2通は見逃してやるが、3通目は目を通すよ。」と、公爵は厳しく言いました。

 

それから公爵は、テーブルに肘を突いて幾何の図の書かれたノートを押し勧めました。

父の説明は、彼女の頭には何も入っておらず、いじけ切って居るので、恐ろしさが先に立って何も理解出来そうでは有りませんでした。

毎日こんな感じで、娘は早く自分の部屋に戻って問題を解きたい思っており、父親の方は癇癪を起こすまいと必死にこらえていましたが、しまいには癇癪を起こすと言う始末でした。

「数学は大事だよ。お前が我が国の馬鹿な婦人共のようになる事はわしは望まん」と、彼は娘の頬を軽くポンと叩きました。

 

彼女が出て行こうとすると、彼は引き留めて、まだページが切られていない新しい本を一冊取り上げました。

「『神秘の鍵』とやらをお前の女友達が送って来たよ。宗教書だな。わしは誰の信仰にも干渉はせんよ。持っておゆきなさい。」

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(解説)

アンドレイ・ボルコンスキーの父の老公爵と彼の妹・マリヤの描写ですね。

父親の堅実な生活ぶりと規則正しさが述べられています。

若い公爵令嬢のマリヤは、一般の上流家庭の令嬢のように蝶や花やとは育てられていません。

読んでいて、このままでは彼女の人格がひねくれてしまうのではないか❓とも思えるような厳しい躾ですね。

 

ボルコンスキー公爵家の長男であるアンドレイは、社交界の華と歌われたリーザと結婚しており、夫婦間がぎくしゃくしていますが、アンドレの育った環境にその理由があるのかもしれないですね。

リーザは依頼心が強く、男性は女性の言う事を聞くべきだ。。みたいな感じですからね、父のボルコンスキー老公爵とは合わなさそうですね。

これからアンドレイは戦場に行き、妻のリーザはアンドレイの父とマリヤと過ごす事になりますから、ストレスが溜まりそうですね。。