源氏物語「東屋」① 浮舟、左近の少将との縁談とその破綻。 | 気ままな日常を綴っています。

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東屋」(あずまや)は、『源氏物語』五十四帖の巻名の一つ。第50帖。第三部の一部「宇治十帖」の第6帖にあたる。 

巻名は、浮舟の隠れ家を訪れたが詠んだ和歌「さしとむるむぐらやしげき 東屋のあまりほどふる雨そそきかな」(東屋に葎が生い茂って戸口を塞いでしまったのか、あまりに長い間雨だれの落ちる中で待たされるものだ)にちなむ・・以上ウイキペディアより

薫:26歳、匂宮:27歳、中の君:26歳、浮舟:21歳、夕霧:52歳

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薫の君は、常陸の守の継娘(=浮舟)に会ってみたいお気持ちはありながら、そんな端山の茂みのような身分の女(※浮舟は、八の宮の姫君ではありますが、私生児であり、母君の身分は大君の母君よりもうんと低い。父の認知を受けない私生児は、嫡出・非嫡出の中で最も身分が低い。)にまでむやみに興味を示すのは、世間からも軽々しく見られ、身分にふさわしくないだろう。。と差し控えられ、お手紙さえお遣りになれないのよ。

弁の尼から、姫君の母北の方に「薫の君は。姫君に御執心らしい」など、それとなく手紙で仄めかして来るのだけど、まさか薫の君が本気で御執心になられるとは受け取れず、ただただ有り難く思っているのよ。

 

常陸の守には、亡くなった北の方との間の子供と、今の北の方との間にも大勢の子供が居たのよ。

そして、それぞれの子供を何くれと養育しつつも、この後妻の連れ子の姫君だけは他人だと思って、分け隔てをして放っていたのね。。

母君は、いつもそれをひどい仕打ちだと、夫を恨みながら、何とかしてこの連れ子の姫君を、他の娘達より面目をほどこす結婚をさせて幸福にしてやりたい、と日々心がけ大切にしていたのよ。

なぜなら、姫君の姿や器量が、他の娘達とは比較にならないほど美しく気高く成人なさったので、母君は惜しくて可哀想でならなかったのよ。

 

ところで、常陸の守は、素性のいやしい人ではなかったのよ。

上達部の血筋で、親戚も悪くなく、財力は莫大だったから、それなりに自尊心が強く、邸も派手にきらきら飾り立てて住んでいたのよ。

風流ぶっている割には、妙に荒荒しく田舎じみた面もあったのね。

平凡な家柄という点は問題にせず、財力に引かれて美しい若い女房達も集まってきて、衣装や身なりは華やかに着飾って、下手な歌の会をしたり、物語を聞く会などみっともない程派手派手しく風流ぶっていたのよ。。

 

それを見て、娘達に求婚している公達も「きっと美人で才気あふれた娘達なのだろう」と、それぞれ心を砕いているのよ。

その中に左近の中将といって、歳は22、3くらいで、性質もしっとりしていて、学才の点では世間に認められている者がいたのよ。

でも、左近の少将には、派手に現代風な事は出来ない経済的な事情もあった様なのね。

その左近の少将は、こちらにひどく熱心な手紙をよこして言い寄って来るのだったのよ。

この母君は「大勢の求婚者の中で、左近の少将は人柄・気持ち・品格が良く、これ以上の立派な身分の人では、いくら何でもこの程度の家柄の娘などに求婚してくれるはずも無いだろう。。」と、少将の恋文をこちらの姫君に取り次いで、折に触れては適当な感じの良い返事など、お書かせになるのよ。

 

母君は「たとえ、常陸の守がこの姫君に身を入れてくれなくても、私は命に代えても大切にお世話しよう。この姿や美しさを知ったら、いい加減に思う人もいないだろう。。」と思い立って、結婚の日取りを8月くらいと約束してお支度を始めるのよ。

そうこうするうちに、少将は、約束した8月を待ちきれないで「どうせの事なら、少しでも早く」とせき立てるのよ。

母君は、自分一人の算段で、こんな風に婚礼を急ぐのも気がひけるし、先方の心もどこまで信頼していいのかわからないので、この縁談の世話をしてくれている仲人に相談するのよ。

仲人は、母君が少将の恋文を、守の継子の姫君に渡している事を、少将にお伝えするのよ。

すると、少将の機嫌がみるみる悪くなるのよ。

なぜなら、少将は、常陸の守が大変な財力を持っているから、しっかりした後見をして欲しかったからよ。

ただでさえ、常陸の守の娘へ婿になって通って行くのは世間でも決して良くは言われないのに、継娘に通ったりすれば、世間の評判は少将がへつらっているように見られてしまうし、守からも婿待遇もされないからよ。

 

すると、この仲人は、この縁談が破れるのは、少将との関係からも守との関係からも非情に残念に思い「それでは、実子の方にお取り次ぎしましょう」と言うのよ。

少将は「自分の本心は、あの常陸の守が、人柄も堂々として貫禄があるので後見をしてもらいたい、と見込んだからこそで、器量の良い女ばかりを望んでいる訳ではない。少々人に悪口を言われても、暮らしに不自由しないですむ世の中を過ごしたいと思うのだ。守に私がこう言っていると話して、それでもいいと納得してくれるなら、なあに構うものか、相手を乗り換えよう」とおっしゃるのよ。

 

この仲人は、左近の少将の言葉を、常陸の守に伝えに参上するわ。

守は、少将が自分を信頼して下さってのお気持ちである事を喜び、自分が特に可愛く思っている幼い娘(実子)の婿とし、後見を自分に任せるように言うのよ。

少将は、守が(少将が)大臣になるための運動費まで出そうなど、田舎者らしい話とは。。と思うものの、悪い気はしないので、ほくそ笑んでその話を聞かれるのよ。

 

そして、北の方の思惑に違約してしまう事を心配していたものの、仲人のそそのかしも有って、一応はひどい男と思われ、人に少々の悪口を言われたところで、将来末長く生活が安定することが大切と考えるのよ。

全く抜け目のない功利的なお人で、早々に守の実子の姫君と結婚することに決めてしまうのよ。

そして、婚礼の日取りさえ変えもせずに、約束したその日の夕暮れから婿としてお若い姫君に通い始めるのよ。

 

一方、北の方は、誰にも知らせず、一人で上の姫君(=浮舟)の婚礼の支度を急いでいたのよ。

左近の少将の心変わりも知らされずに。。

北の方は心の中でこう思うのよ。「ああ。。父宮は御自分の子と御承認して下さってあちらでお育ちになっていたら、八の宮がお亡くなりになったとしても、薫の大将のお申し込みを、たとえ身分不相応だとしても、お受けしてもどうして悪かろうか。。」とね。

北の方は、この姫君がこのまま惜しい娘盛りを過ぎてしまうのが惜しかったのよ。

 

その婚礼の日もいよいよ明日明後日と思うと、母君は気が気でなく、そわそわあちこち行き来するのよ。

そこへ常陸の守が入って来て「この私に隠れて、貴女はうちの可愛い娘の求婚者を奪おうとしたな。そんな御大層な貴女の娘を欲しがる若君は居ないだろうな。少将殿は、心変わりなさって私の娘をご所望なさるようだ」と、人の気持ちなど思いやりもせず、ただ言い散らして出て行くのよ。。

 

今日はここまでです。

いつも駄文で申し訳ありません。

次回も「東屋」②です。

 

今日も良い一日をお過ごしくださいね❣️

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(追記①)

薫は、浮舟と会って話をしてみたい。。と思いながらも、そんな身分の低い女にこちらから会いに出向くのも世間がどう思うだろう。。とお手紙さえ出さないのでした。

また、弁の尼から浮舟の母・北の方に「薫の君は、姫君にご執心らしい。。」と手紙で言って来るものの、まさか本気ではあるまい、とただ有難く思うだけでした。

 

ところで、浮舟の義父・常陸の守は、自分の子と連れ子の浮舟を分け隔てて育てていたのです。

それで母君は、そんな酷い仕打ちをする夫を恨みながらも、何とかして浮舟に面目を施す結婚をさせて幸福にしてやりたいと姫君(浮舟)を大切にしていました。

姫君は、他の娘達と比較にならない程美しく気高く成長していたので、母君は惜しかったのでした。

 

常陸の守は財力があったので、それなりに風流ぶって歌の会などを催したりしていました。

それで、娘達に求婚をして来る公達なども居たのです。

その中に左近の少将という若者が居ました。

性質もしっとりして学才も有ったのですが、経済的な事情を抱えていた青年でした。

母君は、この左近の少将を姫君のお相手に。。と考えます。

左近の少将の方も、結婚を急ぐので、母君は一人で決め兼ねて仲人に相談に行きました。

 

仲人は、左近の少将に、今、相手となっているのは継子の娘である事を明かします。

すると少将はみるみる機嫌が悪くなるのでした。

なぜなら、少将の結婚の目的は、財力がある常陸の守から後見される事だったからです。

だったら。。と仲人は、少将のお相手を実子の方に勧めるのでした。

少将は、悪びれることも無く実子の方に乗り換えてしまいます。

 

仲人は、常陸の守にその旨を伝えに参上します。

常陸の守は、これを喜んで受け、幼い娘の婿として後見を引き受けるのでした。

少将の方は、少し位世間に酷い男と噂されても、将来末長く生活が安定する事の方が大事だったのです。

 

そして婚礼の当日が来ました。

母君は、少将の心変わりを知らずに婚礼の支度をしている所に、常陸の守から「真実」を突きつけられます。

母君は、八の宮さえ自分の子と認知して下さっていたら、あの薫の君のお申し込みは不相応では無かっただろうに。。と残念に思うのでした。

 

(追記②)

八の宮の私生児である浮舟は、母の嫁ぎ先でも、継父になんの配慮もされず、娘盛りの21歳を迎えようとしています。

実母は、浮舟の美貌や気品高さを勿体無く思います。

もし、実父の八の宮の「認知」があれば、この姫君はれっきとした「宮様」として扱われたはずなのですね。

だから、薫の大将のような高貴な男性の女君の一人となってもなんら問題はなかったのです。

 

母君は、薫の申し出を知りながら、さすがに今の身分のままでは不相応だと、その話を本気にも出来ないでいるのです。

一方、薫も、亡き大君に生き写しで、実際見た感じも「自分の運命の女性」だと感動しつつも、身分の差故に手紙も出せないでいるのです。

 

そこへ、左近の少将というまあまあ見所のある若者からの結婚の依頼を受けた母君は、まず自分の娘に。。と考えるのですね。

そのまま話は進んで行くのですが、左近の少将という人物は、今で言うなら「学才」と言うか勉強を頑張ったことによって認められた、後ろ盾のない貧しい青年だったのですね。

こう言う人間に有り勝ちな考えなのですが、結婚も「夢」より「実利」を取るタイプだったのです。

だから、後見をして欲しい常陸の守の実子でない娘との結婚など「とんでもない❣️」事だったのです。

そして、こう言う人間はあっさり相手を乗り換えてしまうのですね。

 

それを自分の夫から婚礼の当日に母君は聞かされてしまうのです。

せっかく、浮舟に用意した相手を夫の実子に取られてしまうのですね。。。