職場に、千田さんという女性がいる。

彼女は絵に描いたような中年女性で、優しくて小柄で小太りでショートカットで、いつも瞼に変な色のアイシャドウを塗っている。
カワイイおばちゃんグランプリ2022コンテストがあれば、彼女は間違いなくファイナリストに残るだろう。

そして世の中のおばちゃんがそうであるように、例に漏れず彼女もお喋りである。

間違って一言話しかけさえすれば、その後10分間は拘束されてしまう。
ただ、私は彼女の優しげな語り口調が嫌いではないので、お喋りの時間は苦ではないのだが、ひとつ問題がある。

声が小さすぎるのだ。

何を言っているのか全く聞き取れない。
しょうがないから、いつも勘で相槌を打っている。
本人は楽しそうに話し掛けてくるので、私の相槌はきっと間違ってはいないのだろう。

今日も10分ほど拘束されたが、聞き取れなかったので、
・へぇ〜そうなんですね!
・それめっちゃわかります!
・あはは!!!
・なるほど!良いこと聞きました〜!
あたりをランダムに返答していた。

その会話の中で、唯一、「旦那」という単語を聞き取ることができた。
どうやら千田さんは既婚者らしい。

後から想像するに、彼女は主婦業のライフハックを教えてくれていたらしかった。
やはり優しい人である。

今後も謎に包まれた千田さんをウォッチしていこうと思う。