宝塚歌劇 花組公演 『ファントム』 | ヤンジージャンプ・フェスティバル

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基本はシュミ日記です。
…遊びをせんとや生れけむ 戯れせんとや生れけん…
  

自分が『オペラ座の怪人』をどれだけ好きか・・・という話を、延々とネチネチと語ったのが功を奏したのか、中学時代からの友人(註:タカラヅカファン)からのお誘いが・・・!!

・・・・というわけで、
数ある宝塚歌劇の演目の中でも、代表作の一つに数えられるであろう、この作品を観る機会がとうとう巡ってきたのでした!!!


やはり、持つべきものは心優しきタカラヅカファンの友人だなぁ・・・と思いつつ・・・。
まずは、あらすじをご紹介・・・。



【あらすじ】
19世紀後半のパリ、オペラ座通り、遅い午後。無邪気で天使のように美しい娘クリスティーヌ・ダーエ(蘭乃はな)が、歌いながら新曲の楽譜を売っていた。群集の中にいたフィリップ・ドゥ・シャンドン伯爵(愛音羽麗/朝夏まなと)は、彼女の声に魅せられ引き寄せられる。オペラ座のパトロンの一人であるフィリップは、クリスティーヌがオペラ座で歌のレッスンを受けられるよう取り計らう。

 オペラ座では支配人のキャリエール(壮一帆)が解任され、新支配人のショレ(愛音羽麗/華形ひかる)が妻でプリマドンナのカルロッタと共に迎えられた。キャリエールはショレにこの劇場には幽霊がいることを告げる。そしてオペラ座の一番地下にある小さな湖のほとりが彼の棲家で、自らを“オペラ座の怪人”と呼んでいると。しかしショレは、これは解任されたことの仕返しとしてキャリエールが自分に言っているに過ぎないと取り合わなかった。オペラ座を訪ねてきたクリスティーヌを見たカルロッタは、その若さと可愛らしさに嫉妬し、彼女を自分の衣装係にしてしまう。それでもクリスティーヌは憧れのオペラ座にいられるだけで幸せだった。

 ある日、クリスティーヌの歌を聞いたファントム(蘭寿とむ)は、その清らかな歌声に、ただ一人彼に深い愛情を寄せた亡き母を思い起こし、彼女の歌の指導を始める。ビストロで行われたコンテストで、クリスティーヌはまるで神が舞い降りたかの如く歌った。クリスティーヌの歌声を聞いたカルロッタは、彼女に「フェアリー・クイーン」のタイターニア役をするよう進言する。フィリップはクリスティーヌに成功を祝福すると共に、恋心を告白する。ファントムは幸せそうな二人の姿を絶望的な思いで見送るのだった。

 「フェアリー・クイーン」初日の楽屋。カルロッタはクリスティーヌに酒盃を差し出した。これはクリスティーヌを潰すための罠だったのである。毒酒と知らずに飲んだクリスティーヌの歌声は、ひどいありさまだった。客席からは野次が飛び、舞台は騒然となる。怒ったファントムが、クリスティーヌを自分の棲家に連れて行く。それはクリスティーヌへの愛情の表現にほかならなかった。しかしそれが、やがて彼を悲劇の結末へと向かわせることとなる……。

(宝塚歌劇 花組公演『ファントム』特設サイトより)


うおー!これはっ!!!


僕が慣れ親しんできた、アンドリュー・ロイド・ウェバー版のミュージカルとも、そのミュージカルを基にしてつくられた2004年の映画版とも、ガストン・ルルーの原作とも違うストーリ展開。
そして宝塚歌劇のみなさんの、とにかく完璧な歌とお芝居・・・・。

上演時間の約3時間があっという間。
実はこの日は朝からお腹の具合が悪かったりしたのですが、それを忘れるほどの充実した時間を過ごすことができました。



今作(『ファントム』)の魅力は、オペラ座の地下に住んでいるファントムを「怪人」ではなく「エリック」という一人の人間として描いているところでしょうか。

原作でも、ウェバー版ミュージカル(と2004年映画版)でも、オペラ座に住む怪人は音楽や建築、美術・・・といった、様々な才能を持ちながらも、容貌の醜さゆえに人々から嘲笑され中傷され、世間から隔離された地下へと追いやられてしまった・・・・という人物。

ところが今作では、怪人=エリックは音楽の才能を持ちながらも、自らの醜い容姿にコンプレックスを持ち、地下へと逃げ込んだ・・・・という人物。

オペラ座の地下に「ファントム」として住んでいる、という点では同じだけれども、「地下へと追いやられた」のと「地下へと逃げ込んだ」という差は非常に大きく、『ファントム』でのエリック君は、自分の全てを愛してくれた母親への想いが捨てられなかったり、自分に世話をやいてくれるオペラ座の支配人のキャリエールに対してはどこか頭が上がらなかったり・・・という愛すべき存在。
・・・・そんなわけで、エリック君には、最初から最後まで感情移入しっぱなし恋の矢


もしかするとこれは、観客の想いがエリック君を演じるトップスターへと向かうように・・・というタカラヅカ的作戦なのかもしれないけれど、原作ともウェバー版とも違うこの演出はとにかく感動的。

歌のレッスンを通して、エリック君とクリスティーヌが惹かれあうシーンでは、ついついエリック君を応援し、そしてラストに待ち受ける哀しい結末には心が震え、
そしてウェバー版とは違う、地味ながらもパワフルな楽曲の数々が激しく胸を打つ・・・・といった感じ。

今まで、劇場やDVDや本で何度も何度も繰り返し観たり読んだりしたストーリーなのに、ここまで演出が違うと、もうまるで別物。
この作品の持つ、新たな魅力に気づかされたのでありました。



さて。
思い返してみれば、宝塚観劇も既に5、6回目・・・。

初めて観た時は、タカラヅカ独特の雰囲気に圧倒されて、ただただ唖然とするしかなかったのでしたが、次第にその雰囲気にも慣れてきた・・・・どころか、次第にその雰囲気が快感になってきた感じ。


これからも、機会があったら・・・・
・・・っていうか、これからは自ら機会を作ってでも、ぜひ足を運んでみたいなぁ・・・・と、心の底から思い始めている自分に気づいた、
そんな嵐の午後だったのでありました。