さぁ、いよいよ今回の見仏旅行の最大の目的地。
東大寺の法華堂(三月堂)へと向かいます。
この法華堂。
東大寺の中で、一番古くからあると言われているお堂。
お堂の内部は本尊の不空羂索観音を中心に、天平時代の仏像14体を含む、全16体の仏像がところせましと並んでいる…という、見仏人にとっては正に極楽とでもいうべき、奇跡の空間。
…ところが最近の調査で、お堂の老朽化が激しく、かなり危険な状態であることが判明。
今年5月から、急遽お堂の改修をすることが決定。
更に…
それを期に、仏像の配置も見直されることとなり、創建当初からいたと伝えられる8体の仏像以外は他所に移されることになってしまった…とのこと…。
つまり今年の5月を持って、この仏像ドリームチームは解散。
この奇跡の空間は永久に失われてしまい、二度と見られなくなってしまう…ということなのです…。
あぁ…。
最後だとわかっているなら
…。
何とかしてこの胸にとどめておきたい、その姿…。
そう思いたったのが先月のこと。
そんな経緯で急遽、今回の見仏旅行が企画されたのでありました。
さて、気付けば数年ぶり。久々に訪れた法華堂。
外の空気とは違う、ひんやりとした空気が、相変わらず素敵。
その中で窮屈そうに…。
でも何だか居心地良さげに、それぞれの存在を主張する仏像たちの姿は、この世のものとは思えない、荘厳な美しさ。
ああ、この奇跡の空間が、もう二度と味わえなくなるなんて…。
文化財保護の為には、解散&解体修理はきっとベストな選択。
それはわかってる。
…でも…。
でもさぁ…
…何とかならないんですかねぇ…と思ってしまうことも確か…。
仏像ドリームチームを前にワクワクする僕のココロ。
しかしながら、同時に心の中に隙間風がびゅうびゅう吹いている…そんな複雑な気分…。
そうこうするうちに、あっという間に時は過ぎ、拝観終了の時間…。
やりきれない想いを抱えつつ、東大寺の境内をとぼとぼ歩きます。
帰り道 夕陽をバックに鳴く鹿の 声聴くときぞ 春はかなしき
……でも、いつまでもクヨクヨしてたって仕方ない。
所詮、世の中なんてものは、ままならないことばかりの繰り返し。
いくら悔やんだところで、現在のこの法華堂の姿が戻らないというならば、それはそれ…ときっぱり諦めようじゃあないか…。
そして、今までこの奇跡の空間を味わわせてくれた事実…。
そのことに感謝して生きていこうじゃあないか…。
真っ赤に煮えたぎって、ぶるぶると落ちていく夕陽を眺めながら…。
一人静かにそんな決意をする僕だったのでした。
不空さんチームよ…。
今までどうもありがとう。
これからもどうかお元気で………………………。