基本フォントで「MS Pゴシック」を優先するサイト

「価格.com」「デジカメinfo」等の大手掲示板で、Windows向けには今なお「MS Pゴシック」が優先フォントの指定です。 2007年に Vistaで「Meiryo(メイリオ)」が配布されてから10年を越えるというのにです。

(注: 2023年時点で「デジカメinfo」は脱MSPの設定に更新されています)

 
「価格.com掲示板」のページのフォント設定を調べると、
 
body {
    font-size: 13px;
    font-family: "MS Pゴシック", "MS PGothic", "ヒラギノ角ゴ Pro W3","Hiragino Kaku Gothic Pro", Osaka, arial, verdana, sans-serif; }

 

となってます。 これでは、Windowsユーザーは「MS Pゴシック」をアンインストールしない限り、「MS Pゴシック」で表示されます。

 

そこで色々と調べると、『低解像度のモニターでは「MS Pゴシック」は識別度が優れている』という事が、その理由らしいと思えて来ました。
 
 
 

「MS Pゴシック」と「メイリオ」を比較する

小サイズフォントの表示の違い

ブラウザの拡大率を増して行くと、画面上の文字は当然拡大しますが、これは100%時の像をグラフィックの様に拡大しているわけではありません。 常に滑らかで美しい文字を表示する「TrueType」等のフォント技術で拡大表示していて、「MS Pゴシック」も「メイリオ」もその類です。
 
しかしブラウザの縮小時は、文字表示の方法が異なります。「MS Pゴシック」は一定の文字サイズ以下でビットマップ文字を代用として使い、「メイリオ」は一貫して計算による描画をします。 ここに今回の問題の根がある様です。
 
サンプルとして、「価格.com 掲示板」を Chrome で表示して見ました。 このコメント欄は「MS Pゴシック 13px」の指定です。 実際のハードコピーを下図の左側に、そして Stylusで「メイリオ」に改めた状態を右側に並べています。
 
 
判り易く更に2倍に拡大したのが下図です。 低解像度モニター(画素が大きい昔のワープロなど)では下の様に見えます。
 
 
「MS Pゴシック」はビットマップ表示、いわゆるドット絵です。 少ないドットで漢字の線の間引きやデフォルメがありますが、表示はくっきりして線幅は常に1dotです。
 
一方「メイリオ」はバランスが良く、露骨な間引きはなさそうですが、アンチエイリアス(滑らかにみせる処理)で全体にぼやっと見えます。
 
これが、低解像度で「MS Pゴシック」は識別度が優れるとされる内容です。 昔使用していたノートパソコンの文字にはアンチエイリアスが無く、確かにそんな印象だった事を思い出します。
 

高解像度のモニターでの表示では

 
さて、現在の私のモニターで13px文字は小さ過ぎて、ブラウザ拡大率は150%程度が欲しくなります。 計算上で文字サイズは20px弱になりますが、下図は、その画面の表示の比較です。
 
 
「MS Pゴシック」は未だビットマップ表示で、ドット数を増した大きな文字を表示しています。 しかし、文字の線が1dotで細いため、私には非常に見難く感じます。「メイリオ」の方は、線が太くてデザインも綺麗で、明らかに読みやすいのです。「MS Pゴシック」は、拡大率を175%まで上げた途端に太い TrueType表示となりますが、これは余り美しいとは思えません。
 
ちなみに、上図を更に拡大して「MS Pゴシック」のドットを数えると「18×18dot」でした。
 
 
 
 

基本フォント指定に現れるサイトの姿勢

 
以上の事をまとめると、掲示板などのフォント設定は、「低解像度の環境からの参照を確保し、高解像の環境はそれぞれの対処にゆだねれば良い」という考えに思えます。 その結果として、対処をしなければ、かなり読み難いのを我慢させられる人も多いというわけです。
 
しかし、現在はスマホ対応が進んでいるわけで、高解像度化するPCモニターに未だビットマップフォントを優先指定するのは、いかがなものかと感じます。
 
ちょっとウェブの実情を調べてみました。
 
「価格.com」はトップページなど、掲示板を離れると「メイリオ」が最優先の指定になります。「Yahoo!」のトップページでは「MS Pゴシック」ですが、その分岐に入れば「ヤフーニュース」「オークション」等では「メイリオ」が優先です。「Google」は、検索結果表示や各種サービスで「arial,sans-serif」が常に指定され、これはユーザー側のブラウザ指定に委ねた感があります。

このあたりから推測できそうな事は、出来るだけ広い層を意識した時に「MS Pゴシック」を指定するという事です。 公共機関が万民に対して公平を求められる様に。 しかし、レストランやショップなど流行や独自のセンスの側に重きを置く場面になると「メイリオ」の指定というわけです。
 
2チャンネルの様なアスキーアート(文字絵) が文化として定着した掲示板では、表示フォントの持続を望む部分もあるでしょう。 私が知らない理由で、他にも「MS Pゴシック」を優先する理由があるかも知れません。 この様な問題、アルファベット等の簡素なフォントで済む文化圏では、かなり異なるだろうと思います。