午前十時の映画祭で観てきました。

小津作品は『東京物語』と『秋刀魚の味』も午前十時の映画祭で観ましたが、どちらも大大大大大好きだと思ったので、まあこの作品はきっとこの2つより面白いなんてことはないだろうと思って観てきましたが、これも大大大大大大好きになりました。小津監督、天才の中でも一段レベルが違う天才だなと思います。


まず登場人物全員の顔や表情や仕草が最高です。それを1ミリも逃さない1人ずつ映すカメラワークあってこそだと思いますが、俳優さんたち全員がものすごい微妙な表情を表現しており、こういうのって演技指導とかあったのかな?みんな演技がべらぼうに上手いのかな?それともみんな天然でああいう表情なのかな?とか、もう謎です。


舞台は古い日本(の大阪)なので喋り方は多少古風だし服装も和服を当たり前に着ていたりするのですが、繰り広げられる会話劇が今と何ら変わりないのですよね。嫌な風習とかちょっと嫌な人に対しては、みんなちゃんと嫌だなって顔をもの凄い微妙な顔で表現するのですが、その表情の微妙さゆえに嫌なものを完全に悪とは思わず緩く受け止めているのが伝わるので、なんか凄く温かいし、嫌なものを笑に変えられているのが素晴らしいです。


私が観た小津作品3つは全て家族や死がテーマにありましたが、こういうのは時代や国が違っても伝わりますね。(フェリーニの甘い生活にも少し似た空気を感じます。)

今回観た小早川家の秋は、コメディタッチでありながら他の2作品より更にストレートにこのテーマを描いているように感じました。

また、コメディな部分もかなり面白く、面白い分余計に悲しい。名作って、こういう表裏一体が必ずありますね。


他の小津作品もどんどん観ていきたいのですが、この映像の凄さは映画館の大きいスクリーンで観たいので、今後も午前十時の映画祭に期待しています(笑)

それにしても、本当に映像のセンスが凄い。3作品とも、オープニングのタイトルなどの文字からして全て完璧なんです…。小津は異常だ!