午前10時の映画祭で観てきました!(ちょっとネタばれあります。)


粗筋も何も調べず見に行きましたが、私はこの映画とても好きです。

今この映画を上映するのは間違いなくコロナ禍が関係していると思いますが、コロナ禍で感じた憤りが随所で表現されていると思いました。


映画の粗筋としては怒りしか感じられない話ですが、全体の雰囲気はいかにも雑で愛らしい西ヨーロッパ人が作った映画って感じで、ソフィア・ローレンの存在も説教臭い雰囲気になるのを防いでくれていたし、なぜか元凶となった感染したテロリストですら「そんな悪いやつじゃないのかも?」と思える雰囲気があり、勧善懲悪とは逆の人物の描き方が良かったです。


細かいところは雑なんですが、人物の描き方がテンプレ的であるとか、そういう雑さではなかったのが良かったです。

また、意外とこの展開の雑さ自体が映画の骨組みに関連している気がしました。

アメリカ的な「管理したいけど、管理できないなら武力でねじ伏せる」みたいな雑さと、ヨーロッパ大陸的な「現実見てみろや。決まりがなんや?そんなもん破ったれ!」みたいな雑さがあり、2種類の雑さがぶつかり合っているのが変にリアルでした。

まさか国が列車ごと橋から落とそうなんて雑なこと考えるわけないやろって思いますが、今の世の中を見ていると、案外それくらい雑な案しか国の代表は考えないってことを私たちも薄々分かってきているので、私は見ている間背筋が冷たくなるような思いをしました。

また、「自分には権限がない」と言って、普通に考えたら絶対におかしなことを思考停止で遂行する隔離の実行員の人たちは、日本のお役所仕事にも通じるものがあると思いますが、これが行き過ぎて死人が出るのは未来世紀ブラジルの構図とも似ていて、こういうどこにぶつけてよいのか分からない強い怒りって割とコロナ関係なく日常でもあるよなって思いました。


感染の危険があるかもしれないのにベタベタ人と触れ合ったり、リアルに考えるとそれどーなん?って思う部分もあると思いますが、ソフィアローレンが必死に手洗いしていると元旦那が「いくら洗っても無駄だよ。感染するかどうかは運だよ。」って言っていたのが、私的には「うんうん」って思いました。

確かに感染予防で手洗いやアルコール消毒するのは大事ですが、ウィルスってすごくミクロな存在なので正直それだけで防げるとは思えないので、手洗いが第一みたいになってはいけないよなと思います。

この映画の登場人物は、自分が感染るかもしれないからと他の感染者をバイ菌みたいに扱わず、隣の人がしんどそうなら心配して介抱してあげたりして、これは手洗いより遥かに大事なことだよなと思いました。


すごく雑な映画でしたが、なんか心に刺さるものがある映画でした。